共同通信放送協議会運営委員会における孔鉉佑駐日大使の基調演説(全文)
2021-12-17 17:11

 皆さん、こんにちは。本日は共同通信社、放送協議会のご招待により、メディア各社の皆さん方と交流する機会を与えて頂き、誠にありがとうございます。50社以上が参加していると伺っておりますが、日本のメディア各社や各界の中日関係への関心の高さをよく実感できました。この機会で、当面の中日関係やいくつかの注目の話題についてお話をしたいと思います。また、皆さん方と一緒に、中日関係の発展のためにメディアが果たすべき役割についても、一緒に考えていきたいと思います。

 去る1年間を振り返ると、中日関係の一番のビッグニュースは、日本の政権交代直後、習近平主席と岸田首相の電話会談かと思います。両国指導者は国交正常化50周年を契機に、新しい時代の要請に合致した中日関係を構築するで一致し、両国関係の進むべき方向性を明確にしました。一方、中日関係には依然複雑かつ厳しいものがあり、古い問題と新しい問題が絡み合い、外部の妨害要因に直面しているなど、「進まざれば、すなわち退く」ような岐路に立たされています。そんな中、来年国交正常化50周年は双方にとって、過去の経験と示唆を汲み取り、現在の問題解決に生かして取り組み、そして将来の方向性を定める重要な節目となるだろうと思います。

 第1の示唆は、相互尊重を堅持し、小異を残して大同につく精神でイデオロギーと価値観の違いを処理すること。50年前の冷戦時代、中日は真っ向から対立する陣営に属し、お互いの相違する部分は今よりはるかに大きかったです。にもかかわらず、先人の政治家たちは、政治体制や社会制度、イデオロギーで異を残しつつ、中日平和、友好、協力という大同につき、国交正常化の戦略的決断を下して、両国を敵対から和解へと導き、アジアと世界の平和と発展に重要な貢献をしました。この事実が証明したように、イデオロギーや価値観の違いは国同士の付き合いの障害にはならない、まして対立や対抗の理由になってはいけません。

 50年後の今日、冷戦時代の幕が引かれましたが、イデオロギーの対立や国家間の対抗を煽り立てる冷戦的思考はなお消えていません。中米対立が激化し、米国が対中イデオロギー攻勢を強める中、中日間のイデオロギーや価値観の違いが人為的に際立たされるようになりました。日本の一部の人が偏見に基づき、中国の政治制度や道路を攻撃し、いわゆる新疆、香港人権問題のデマやウソを喧伝し、ひいては北京冬季五輪に対する「外交ボイコット」という政治パフォーマンスを鼓吹しています。日本側には、両国関係の大局に衝撃やダメージを与えないよう、この危険な逆流を強く警戒し、阻止してほしいと思います。また、日本側はスポーツの政治化に明確に反対し、中国が東京五輪を支持したことに善意でもって応えるべきだと思います。

 第二の示唆は、「中日両国が互いにパートナーであり、互いに脅威とならない」という政治的コンセンサスを履行し、協力ウィンウィンという正しい方向性を把握すること。国交正常化以来、中日関係は量的にも質的にも飛躍的に発展し、両国のそれぞれの発展を力強く後押しし、両国民にも大きな利益をもたらしました。中国の改革開放は日本から多大な支援をいただき、中国の発展も日本側に大きなチャンスを与えました。コロナ禍が続く今年でも、中日の二国間貿易額は3,800億ドルに達し、記録を大幅に更新する見込みです。中国は14年連続で日本最大の貿易相手国となり、対中貿易は輸出入ともに日本の対外貿易の20%以上を占め、3万社以上の日本企業が中国で事業を展開しています。このように密接に依存しあう中日両国は、互恵、協力で発展を支え合うことは理の当然で、良き友人やパートナーにならない理由がどこにあるでしょうか?

 しかし、日本国内では常に様々な「中国脅威論」が出てきています。日本メディアの中国関連報道では、「念頭」と「牽制」という2つの言葉が頻繁に登場し、あたかも日本側の一挙一動が中国を阻止し、封じ込めるのが目的かのように見えます。何と中日の利益が最も密接な経済分野でも、昔と比べて協力を呼び掛ける声は少なくなり、代わりに「経済安保」を強化する声が増え、双方の経済面での相互補完や依存をサプライチェーンのリスクと見なし、正常な経済・貿易・科学技術協力にも干渉や制限を加え、さらには中国との「デカップリング」を吹聴する人もいるなど、中国はいつの間にか日本の最大の貿易相手国から最大の経済的脅威にでも変わったような気がします。中米対立で、日本の一部の人は、日本自身の利益もわきまえず、アメリカの対中抑圧に何でも同調しようとします。このままだと、日本の対中政策は迷走し、中日関係の健全で安定した発展が難しいでしょう。

 中国は果たして日本の脅威なのか。中日はパートナーになるのか、それともライバルになるのか。日本側が明確に答えなければならない根本的問題です。中国の対日政策は一貫して明確であり、日本をライバルや敵として扱ったことはなく、常に平和友好、協力ウィンウィンを主張してきました。日本側にも、不要な猜疑や誤解をやめ、客観的かつ理性的な対中認識を確立する上、前向きで友好的な対中政策を実行し、より自信を持って開かれた姿勢で対中協力を推進すると同時に、戦略的バランスと自主性を維持し、外部からの干渉を排除し、中日関係が正しい軌道に沿って安定的に推進することを期待しています。

 第三の示唆は、信義と約束を守り、両国関係の政治的基盤を守ること。近隣国である中日に矛盾や相違を抱えるのは当たり前で、要はそれを適切にマネージし、激化させず、中日関係の大局に支障をきたさないことが大事です。国交正常化以降、双方は4つの政治文書に合意し、歴史や台湾などの重大な問題を取り扱うルールを定め、内政不干渉などの重要原則を確認しました。数年前、双方は海に関わる問題などの敏感問題を巡って、4項目の原則合意を得ました。これらのルール、原則、合意がある以上、それに反して、枠からはみ出たり、一線を越えたりすることを絶対しないよう約束を守らなければなりません。こうして初めて、中日関係が安定して持続的に発展できます。そうでなければ大変なことになると、繰り返し証明されています。

 台湾問題についてもうちょっとお話したいと思います。このところ、日本側のマイナスな動きが目立ちます。一部の政治家が「台湾有事は日本有事」と公然と主張し、台湾問題への介入を煽るなど、過激発言を繰り返しています。これは、中国の主権に対する意図的な挑発であり、断固として受け入れません。現在の両岸関係の緊張の根本的原因は、台湾当局が独立路線を頑なに進めていることにあります。また、「台湾独立」勢力を表や裏で唆しているいくつかの国も責任は逃れません。その因果関係をまず間違えてはなりません。我々は最大限の誠意と努力でもって、両岸の平和的統一を実現するつもりですが、「台湾独立」活動や外部勢力の干渉に対しては、もちろん断固として対応します。中国人民が国家主権と領土を守る強い決意、確固たる意志と能力を、誰もが見誤ってはなりません。

 中日関係の歴史を知る人であれば、一つの中国原則が中日国交正常化の大前提であり、日本が中国に対して厳粛にコミットしたことをよく知っているはずです。台湾問題は、中日関係の政治基礎と中日両国の基本信義に関わる最も敏感な問題であり、一歩間違えれば両国関係に破壊的な影響を及ぼします。日本側が台湾問題の高度な敏感性を十分に認識し、中日4つの政治文書の諸原則とこれまでの約束をしっかりと守り、挑発やトラブルを起こすような言動を慎め、「台湾独立」勢力に誤ったシグナルを送らないよう、実際の行動で中日関係の大局を守ることを期待します。

 皆さん

 国交正常化50周年は、中日関係発展の一里塚であり、新たな出発点でもあります。双方は歴史の経験と示唆に基づき、さらに政治的信頼を醸成し、互恵協力を深め、人的文化交流を拡大するとともに、矛盾や相違を建設的にマネージし、中日関係の安定的な改善、発展を促進し、次の50年に向けて、より堅実で成熟して安定的な中日関係を構築したいと思います。これは両国政府の責任だけでなく、メディアを含む両国各界や国民の皆さんの支持と参加も欠かせないと思います。

 中日関係の発展において、メディアは常に重要な役割を果たしてきました。1964年に中日記者交換が行われて以来、メディアは窓口と架け橋として、両国民の相互理解の促進や国交正常化の実現に積極的な貢献をなされました。今日でも、メディアは相変わらず両国民が相手を知る主なチャンネルであり、コロナ禍の今ではなおさらです。メディアは「社会の公器」としての重責を背負い、中日関係の発展のために、より多くのプラスのエネルギーを発信することを期待しています。

 私は毎日たくさんの報道に接し、多くのメディア関係者とも付き合いをしてきました。率直に申し上げると、一部のメディアは中国報道において世論を正しく導く責任を果たしていると思えません。ネガティブな情報が蔓延して、中国への偏見と悪意に満ちた事実無根の報道も見受けられます。中国滞在歴のある日本の友人から、日本で受け取った中国情報は、選別された、切り取られた、加工されたものばかりで、実際に見聞した本当の中国の姿とはまったく違うと言われます。今年の北京-東京フォーラムで、日本側が日本で実施した世論調査によると、8割の回答者が、自国のメディアが中日関係の発展に良い役割を果たしていないと考えています。なぜこのような現象が起こるか、メディアの皆さん方によく考えていただきたいと思います。この場で日本メディアを批判するつもりはありませんし、中国に都合のいいことだけを言ってほしいとも思っていません。ただメディアの皆さんは固定観念や先入観を捨て、真実に立ち返り、全面的、客観的、公平的に中国の真実を日本社会に伝えるべきだと申し上げたいです。今日のこの機会に、皆さん方に中国を観察するいくつかの視点を提案し、中国を客観的かつ公正に報道する一助になれればと思います。

 一つは、政治の視点から、中国共産党を読み解くことで、今日の中国を理解すること。今年は中国共産党創立100周年に当たり、先日開催された中国共産党第19期6中総会では、中国共産党の百年間の成果と歴史的経験を総括し、新たな歴史決議が採択されました。メディアの皆さんはぜひ会議や決議文に注目し、中国共産党の「成功の鍵」を把握していただきたいと思います。なぜ中国共産党は数十人の小さな政党から、9,000万人以上の党員を有する世界最大の政党に成長したのか。なぜ中国共産党の指導の下で、中国は今日のように目覚ましく変貌したのか。なぜ中国共産党は14億人に心からの支持を得たのか。なぜ我々は中国の特色のある社会主義の道を選んだのか。より深くご理解いただけると思います。我々は、中国共産党の指導こそが、中国の制度の最大の強みであり、中国の各事業の成功に対する基本的な保証であると言うのは、決して政治スローガンではなく、100年の歴史と実践によって十分に試された、時代の選択、人民の選択なのです。

 一部の西側の人間は、イデオロギー上の偏見から、いくら中国が発展しても、中国共産党が権威主義、一党独裁とか、中国が民主主義の絶縁体のように思っています。この間、「民主主義のリーダー」を自称するある国は、いわゆる「民主主義対権威主義」の構図を作り、「民主主義サミット」を開催し、自分の基準で線を引き、他国を陣営分けし、対抗と分断を煽りたてています。その本質は民主主義の名のもとに行われた反民主主義行動であり、民主主義を他国の発展を抑制するための道具や武器として使っているわけだから、各国から歓迎されず、当然寂しい幕引きとなったでしょう。

 私たちは、民主主義は全人類共通の価値であり、すべての人々の権利であり、どこかの国の専売特許ではないと考えます。民主主義は様々な形があり、画一的な民主主義は存在しないし、格上で優れた民主主義も存在しません。その国の民主主義が通用するかどうかは、その国の国情に合うかどうか、経済発展、社会の進歩や国民の生活向上につながっているかどうか、国民に支持されるかどうかがポイントです。その国の民主主義の良し悪しを判断するのは、その国の国民しかできず、一部の部外者にはその資格はありません。

 中国共産党の指導の下、中国人民はようやく中国に相応しい民主主義の新しい形態、すなわち全過程の人民民主を探り当てました。我々の民主は、真実で広範な民主で、整った制度と豊富な実績を両方持ち、選挙による民主と協商による民主を両方推進し、プロセスと結果の民主、形式上と実質的な民主、直接民主と間接民主を統合させ、国民の意思表示と政治参与の権利を十分に保証する民主です。我々の民主は、確実に機能して成功した民主主義であり、国民の利益を中心とし、国民の関心事を解決する、真に国民に幸福感、獲得感、安全感をもたらす善政です。この民主は国民からも擁護される民主であり、欧米が実施する世論調査でも、中国国民の政府への支持率は長年90%以上を維持しており、「民主主義の模範」と自称する国々が遠く及ばない高さです。

 我々は自分たちが選んだ中国共産党の指導の下にある制度や道路に十分自信を持っています。他国がそれぞれ選んだ異なる道をも十分に尊重しています。我々は、日本側と相互尊重に基づき、オープンで寛容な姿勢で、それぞれの発展の道やガバナンスの経験について、対等な対話と切磋を行っていきたいと考えています。国際社会においても、民主主義精神を発揚し、主権への尊重、平等な対話、連携と協力など正しい理念を掲げ、国際関係の民主化も進めなければならないと思います。

 第二に、経済の視点から、中国の質の高い発展がもたらす新たな機会を掴めることです。最近、日本では中国の経済成長減速に対する懸念が高まり、中国「衰退論」、「崩壊論」が再燃しました。外部の人は依然として成長率を中国経済を見る最も重視する指標としていますが、我々自身は早くも「スピード優先」から脱却して、新しい発展理念で、新しい発展パターンを構築し、経済発展の質の着実な向上と量の合理的な増加を推進しています。成長率から言っても、中国は今年も8%を超え、世界平均やその他の主要国を大きく上回ると予想されます。さらに、我々は供給側の構造改革を強く推進し、積極的に内需の拡大と消費の回復を促進し、イノベーションに注力することで、より強靭性の高い、基盤の強い経済成長を実現しています。我々は高水準の対外開放を引き続き推進し、ハイスタンダードな自由貿易ルールを導入し、国内と国際の双循環を順調に連動させることで、中国が最も規模の大きい、活力にあふれた、しかもまだまだ成長し続けるスーパー市場として魅力を保っています。我々は数年前から、経済面のリスク予防や解消作戦を展開し、企業の債務問題などのリスクを早期に注意喚起、積極的に介入し、また十分な政策オプションを確保し、システミックな金融リスクが起こらないというボトムラインを守ることができます。中国経済の安定基調は変わっておらず、成長する流れも変わっておらず、長期的に向上するファンダメンタルズも変わっていないと自信を持って言えます。

 他方、国際情勢の大変化とコロナ禍による影響で、外部環境は複雑さや厳しさ、不確実性が増し、中国の経済発展は、需要の縮小、供給面のショック、成長へ期待の低下という長年見られない三つの圧力に直面しております。我々はその困難と課題も冷静に認識しています。先日開催された中央経済工作会議では、来年の経済活動の指針として、「安定第一、安定する中で前進を図る」ことを掲げました。私たちは、引き続き自分の為すべきことをぶれずに果たし、質の高い発展の道を進み、安定的で前向きな経済成長の態勢を維持する能力と自信を持っており、それが世界各国にもより多くの新しいチャンスを提供すると思います。中国今後の発展の見通しについては、心の闇が深い人はいまだ中国の崩壊を想像しているかもしれない、慎重な人は今様子見をしているかもしれないが、賢明な人は一足先に行動に乗り出しました。日本はぜひ中国の近隣やパートナーとしての優位性を生かし、中国の発展の新たなチャンスをつかむことを歓迎します。

 第三に、文化の視点から、「歴史の中国」と「現代の中国」を探ることです。中日には2,000年以上にわたる長い交流の歴史があり、この奥深い歴史・文化的つながりが両国ならではの貴重な財産で、両国民に自然な親近感を与えています。私が鮮明に覚えているのは、1980年代初頭、中国中央テレビと日本のNHKが共同制作したドキュメンタリー特集「シルクロード」は、日本でシルクロード・ブームを引き起こし、一世代の日本人の「中国観」に大きな影響を与えました。喜多郎氏は当時中国に行ったこともないのに、「シルクロード」の名曲を作れたのは、中日の特別な歴史・文化的つながりからインスピレーションをもらったのではないかと思います。今、中日の歴史的・文化的共通点をもっともっと掘り下げ、「シルクロード」のような傑作を作りあげ、両国民の心の共鳴を引き起こすことが今まで以上に必要とされています。

 もちろん、「歴史の中国」だけでなく、「現代の中国」にも目を向けて頂きたいと思います。日本のメディアは、もっとミクロな視点で個人に着目し、一般の中国人の日常生活に近づき、隣人の素顔を理解することを提案します。日本人監督の竹内亮氏が2015年から、ドキュメンタリーシリーズ「私がここに住む理由」の撮影を開始し、200人以上の中国在住の日本人や日本在住の中国人のリアルな物語を台本なしで取材・記録した本作は両国のネットで広く注目を集めました。2020年コロナが流行する最中に「新規感染者ゼロの街ー南京」と「お久しぶりです、武漢」を撮影し、リアルな中国のコロナ対策、そして武漢という街が立ち上がる姿を多くの日本人に伝えました。このような、両国の人々が直接ふれあい、相互理解を深める機会をより多く作らなければなりません。言葉が通じない、育った環境が違うけれど、みんな同じ趣味を持ち、同じ喜怒哀楽を持ち、同じように夢に向かって頑張っている生身の人間だと気づくでしょう。このような交流は、国民感情の改善や両国関係における民意基盤の強化に非常に重要ではないかと考えます。

 第四に、国際の視点から、地域および世界に中国が行った貢献を客観的かつ公正に捉えること。中国は、人類運命共同体の構築を促進することを自分の使命としており、世界平和の構築者、世界発展への貢献者、国際秩序の擁護者となることを固く約束しています。私たちは実際にもこのように行動しています。コロナ禍以来、中国は120以上の国や国際機関に18億5千万回分のワクチンを提供し、たくさんの尊い命を救い、ワクチンを国際公共財にする約束を真に実現してきました。オミクロン変異株がアフリカで猛威を振るっているいまこそ、中国はいち早くアフリカ諸国にワクチン10億回分を追加提供すると発表しました。それでも、中国は「ワクチン外交」との誹謗中傷に晒されます。中国は170以上の国や国際機関と「一帯一路」協力文書を締結し、多くのプロジェクトを実現し、現地の人々に利益をもたらしたにもかかわらず、中国の対外協力が「債務の罠」だと批判されます。この論理で言えば、戦後日本が外国のインフラ整備のために支援した巨額の円借款も「債務の罠」と呼ぶべきだろうか。これはあからさまなダブルスタンダードです。

 その一例が、先日開通した中国・ラオス鉄道です。中・ラオス鉄道の建設を提案したのは中国ではなく、実は20数年前マレーシアのマハティール首相が提唱した「汎アジア鉄道構想」の重要な一環であります。地域の相互連結を実現したいというラオスを含むASEAN諸国の願いを、中国の支援で実現されたものであります。全長1,000km以上、167のトンネルと301の橋を渡るこの巨大プロジェクトは、鉄道のほぼなかったラオスを一挙にして時速160キロの高速鉄道時代に進め、「陸の孤島」からの脱却というラオス人の悲願を叶えました。さらに、ラオスを中国やASEANの巨大市場に真の意味で結びつけ、ラオスにとって経済発展と繁栄に結ぶ道となりました。日本も長年東南アジアのインフラ整備に携わっており、中国と第三国市場協力を積極的に展開し、地域の連結性と一体化の向上に寄与することで、地域諸国にさらなる利益をもたらすことが全く可能ではないでしょうか。

 最後になりますが、本日講演会を企画して頂いた放送協議会に感謝申し上げ、今後ともメディア関係者の皆さん方と率直かつ突っ込んで交流できればと思います。日本社会における正しい対中認識の樹立、そして中日関係の改善・発展の促進のために、メディアの皆さん方が引き続き積極的に貢献することを期待します。

 ご清聴ありがとうございました。