日本は対中認識で三つの深い問題の解決に努力すべき 孔鉉佑駐日大使
2022-05-02 07:40

  4月26日、中国の孔鉉佑駐日本大使は招きに応じて日中投資促進機構(JCIPO)主催の中日国交正常化50周年記念交流会に出席し、100社余りの日本企業を前に講演した。孔大使は、日本は対中認識において主に三つの深い問題の解決に努力すべきだとして次のように述べた。

 中日関係の現状は理想的であるとはいいがたく、新旧の問題が折り重なって際立ち、前進と後退の十字路に差し掛かっている。世界が変わり、中国も日本も変わり、日本の対中政策もそれに追随しなければならないと多くの人が言っている。協調を唱えるポジティブな声が少なくなり、中国に対して強硬なネガティブな論調が多くなっている。これは、日本側の中国に対する誤解と誤認であり、また外的要因にも大きく影響されている。われわれは中日関係の発展を見て、考える際に、当面の現実的な問題に目を向けるだけでなく、深い認識問題の解決にも努力するべきである。以下の三つの方面は特にそのカギとなる。

 第一に、中日の政治体制・価値観などの方面における差異をどう見るかである。われわれは、日本の対中世論に非常に深いイデオロギー的偏見があることをはっきりと感じている。中日間に差異が存在することは客観的事実だが、それは双方が必然的に対立に向かうことを意味するのだろうか。国交正常化の当初から、双方は相互尊重と小異を残して大同につく精神に基づいて、意見の相違と差異を適切に処理し、長期的な平和的共存・友好的交流を実現した。1972年の「中日共同声明」では、双方が「中日両国間には社会制度の相違があるが、平和的友好関係を樹立すべきであり、また、そうすることが可能である」と明記している。50年後のこんにちにおいて、この一点を達成できない理由はない。

 中国は常々、各国にはそれぞれ自国の国情に適した発展の道を選択する権利があると主張してきた。昨年は中国共産党創立100周年で、近代以降の中国の100年におよぶ歴史的な大きな変化は、われわれが、中国共産党が指導する中国の特色ある社会主義の道を進むことを堅持してきたことが歴史の選択であり時代の必然であったことを力強く証明している。ハーバード大学ケネディースクールは10年にわたり中国で世論調査を行ったが、中国の民衆の政府に対する満足度は一貫して90%以上だった。世界最大の広報コンサルタント会社エデルマンが発表した2021年の信頼度調査「トラストバロメーター」によると、中国の民衆の政府に対する信頼度は91%にも達し、世界首位だった。西側の機関が行った調査でも、中国の党と政府が人民大衆の心からの擁護と支持を得ていることが十分に示されている。われわれは自ら選択した制度と道に対する自信に満ちているが、発展モデルを輸出しようとはせず、制度の競争をやらず、他国の内政に干渉することはないし、いかなる国を変えようとも思わない。中日両国は「和して同ぜず」を提唱しており、双方は相互尊重と対等処遇を堅持し、差異を包摂し、より多くの善意と誠意を示すべきだ。

 第二に、いかにして競争と協力の関係を正しく処理するかだ。中国は現在、発展し強大になり、総体経済と一部の具体的な分野で日本を超えたが、中国は日本のライバルになったのだろうか。歴史を振り返ると、日本は最も早くから中国の改革開放に参加し、これを支持した国の一つであり、多くの企業と友好的な人々が中国の経済建設に重要な貢献を果たした。それと同時に、日本企業は中国に深く根を下ろし、中国の経済成長の高速車に乗り、中国市場で大きな成功を収めた。現在、日本の対中投資は累計で1200億ドルを超え、中国に進出した日本企業は3万社以上となり、日本を含む外資企業は中国経済の重要な一部になっている。中日の貿易額は日本の対外貿易総額の4分の1近くを占め、これは日本と米国および欧州連合(EU)との貿易額の合計に相当する。多くの日本企業にとって、中国市場はその発展戦略において大きな地位を占めている。中日両国は早くから相互依存・密接不可分の利益共同体になっている。

 中日の経済貿易協力は一貫して互恵ウィンウィンの模範であり、これまでと同様、今後もそうであるべきだ。われわれは勝敗多寡の競争のロジックに中日の経済貿易関係を主導・定義させてはならない。われわれは競争をなくすことはできないが、競争は必ず公平な競争・開かれた競争であるべきであり、競争のために協力の扉を閉じてはならない。重要なのは共同で協力の「パイ」を大きくし、より幅広い協力の中で相互に促進し合い、それぞれに成果をあげ、協力が一貫して主旋律になるようにすることだ。現在、日本の国会では経済安全保障推進法案が審議されているが、外界はこの立法の目的が中国に対する防衛と制限であり、中日の経済貿易のつながりを弱め、ひいては引き裂くものだと一般的に見ている。いかなる国でも自身の経済安全保障を守ろうとすることは過度に非難すべきでないが、経済安全保障の概念を乱用して、市場の法則に背き、正常な経済貿易・科学技術協力に障害を設けるべきではないし、それ以上にそれを他国に圧力をかけ、封じ込める口実と手段にすべきではない。日本がもっと自信を持ち、開かれた姿勢を示し、中日の互恵協力がよりさらなる高いレベルに進むよう共同で後押しすることを希望する。

 第三に、中日が国際・地域問題で引き受けるべき責任をどう認識するかだ。中国は国際社会でどのような役割を果たしているのだろうか。われわれの立場は明確である。中国は責任ある大国として、一貫して独立自主の平和外交政策を堅持し、世界平和の建設者・世界発展の貢献者・国際秩序の擁護者を揺るぎなく務める。先ごろ開催されたボアオ・アジアフォーラムの年次総会において、習近平主席は基調講演の中で、各国が平和・発展・協力・ウィンウィンの時代の潮流に順応し、人類運命共同体の構築という正しい方向に向かい、手を取り合って試練に立ち向かい、協力して未来を切り開こうと呼びかけた。習主席は、人類は不可分の安全共同体であると強調するとともに、「グローバル安全保障イニシアチブ」を初めて提起し、世界の安全ガバナンスのジレンマを解消し、世界の平和・安寧を守るために中国の知恵と中国のプランを提供した。

 必ず説明しておかなければならないのは、中国が擁護するのは国際法を基礎とする国際秩序であり、少数の国が定義するいわゆる国際秩序ではないということだ。中国が順守するのは国連憲章を基礎とする、各国が広く認めている国際関係の基本ルールであり、ある国またはあるごく少数の国々が定めた「小グループ」のルールではない。中国が守るのは国際社会の公平と正義であり、また物事の是非曲直に基づいて自身の立場を決定するのであって、白か黒か・敵か味方かといった陣営の区分に基づくのではない。中国が行くのは平和発展の道であり、非同盟政策を堅持し、侵略戦争を発動しない、勢力圏を求めない、軍事のブロック対立に参加しないという姿勢に基づいて、あらゆる覇権と強権に反対する。中国が実践しているのは真の多国間主義であり、グローバル化と自由貿易を揺るぎなく守り、「一帯一路」〈シルクロード経済ベルトと21世紀海上シルクロード〉の質の高い共同建設を後押ししている。それによって、世界にもたらされるのは発展のチャンスであり、いかなるわなも陰謀もない。

 もし日本の一部の人が狭苦しい地政学的視点で陣営対立の冷戦思考に執着するのであれば、自ずと中国にさまざまな「不愉快」を感じ、中国を脅威、さらには敵とみなし、自国の利益を追求し、他国に災いを押しつける道を歩むことになるだろう。一方で、視野と枠組みを広く開き、地域と世界の全局の高みにたてば、中日間には幅広い共同の利益と関心事があることに気付くだろう。世界経済の復興後押し、地域発展の協力促進、地域のホットスポット問題の解決、さらには新型コロナ・気候変動・テロリズムなど世界的な課題への対応においても、双方ができること、するべきことは非常に多く、なおかつ協力の喫緊性も非常に強い。日本が戦略的な独立自主を保ち、客観的かつ公正に中国の立場と主張を見て、中国と共に努力し、地域と世界の発展を促進するために積極的な貢献を多く行うよう希望する。

 現下のウクライナ情勢は全世界の注目を集めている。国際社会の一部の人は中国のウクライナ問題における立場を敵意から歪曲(わいきょく)し中傷している。日本国内にもこうした声があり、意図的に中ロを同列に論じているが、ウクライナ危機とは性質が全く異なり、完全に中国の内政に属する台湾問題をこれと一緒くたにし、この機に乗じて台湾海峡情勢の緊張を吹聴しており、中国はこれに断固反対する。中国のウクライナ問題における立場は正々堂々としたものであり、われわれは平和を擁護し、戦争に反対することを主張し、各国の主権と領土保全が尊重されるべきであること、国連憲章の趣旨と原則が守られるべきであること、各国の合理的な安全保障上の関心事が重視されるべきであること、国際紛争は平和的方法によって解決されるべきであると主張する。当面の急務は当事国間の対話と交渉を後押しし、速やかに戦争を停止し、一般市民の死傷を回避することであり、特に人道的な危機が発生するのを防ぐことである。長期的な道は冷戦思考を放棄し、ブロック対立をやめ、バランスがとれた有効で持続可能な欧州の安全保障の枠組みを真に構築することだ。中国は危機を解決するためのあらゆる努力を支持しており、引き続きウクライナ問題において積極的な役割を果たすと同時に、火に油を注ぎ、矛盾を激化させるようなやり方に断固として反対する。

 ウクライナ危機は、一国の安全保障は他国の安全保障を損なうことを代価としてはならず、地域の安全保障はブロック対立によって実現することができないことをあらためて証明した。中日と地域諸国が今回の危機から得た警告は、ようやく得られた平和と安定を大切にし、冷戦思考を地域で再燃させてはならず、地域をブロック対立の戦場にしてはならず、ウクライナ危機をわれわれの身の回りで再演してはならないということである。