孔鉉佑駐日大使、日中投資促進機関メンバー企業にスピーチ発表 オンライン交流行う
2022-05-11 07:42

 4月26日、孔鉉佑駐日大使は招きに応じて日中投資促進機構〈JCIPO〉が開催した中日国交正常化50周年記念交流会に出席するとともにスピーチを行い、日本経済界の関係者とオンライン交流を行った。JCIPOの佐藤康博会長、トヨタ自動車の内山田竹志会長、パナソニックの本間哲朗副社長、東芝の佐藤裕之専務、ヤンマーの小林直樹取締役など100社余りの日本企業の責任者と大使館の宋耀明経済商務公使、張漪波公使参事官がイベントに出席した。

 孔大使は次のように述べた。1972年の中日国交正常化の実現は両国関係史上の重要な里程標である。50年前の歴史環境を振り返ると、戦争がもたらした傷が癒えるまではまだほど遠く、日本との旧交を再開することは中国人民にとって容易ではない決定だった。日本の戦後の歴代政権はいずれも新中国に対し敵視政策をとり、右翼親台湾勢力が中日の国交回復を妨害するために尽力していた。それだけでなく、冷戦期の中日はそれぞれ異なる陣営に属し、政治体制・社会制度・イデオロギーの差異が中日の間に溝のように横たわっていた。さまざまな困難に対し、両国の古い世代の指導者が優れた戦略的知恵と非凡な政治的勇気でもって国交回復・正常化の重大な決断を下し、両国の対立と隔絶を完全に終わらせたことは、戦後の両国関係の再建と新たなる出航の原点となった。

 この50年間、中日関係は風雨を経て長足の発展を遂げ、両国人民に巨大な利益をもたらすだけでなく、地域と世界にも深刻な影響をもたらしている。今日の中日はすでに世界第2位と第3位の経済体〈エコノミー〉として肩を並べており、両国の交流と協力は未曽有の広度と深度に達している。われわれ一人一人がしっかりと中日の平和・友好・協力のボーナスを享受している。50年後のこんにち、中日関係の現状は理想的であるとはいいがたく、新旧の問題が折り重なって際立ち、前進と後退の十字路に差し掛かっている。われわれは中日関係の発展を見て、考える際に、当面の現実的な問題に目を向けるだけでなく、深いレベルの認識問題の解決に努力するべきである。以下の三つの方面は特にそのカギとなる。

 第一に、中日の政治体制・価値観などの方面における差異をどう見るかである。われわれは、日本の対中世論に非常に深いイデオロギー的偏見があることを顕著に感じている。中日間に差異が存在することは客観的事実だが、それは双方が必然的に対立に向かうことを意味するのだろうか。国交正常化の当初から、双方は相互尊重と求同存異〈共通点を求めて相違点を保留すること〉の精神に基づいて、相互の意見の相違と差異を適切に処理し、長期の平和共存・友好交流を実現した。1972年の「中日共同声明」では、双方が「中日両国間には社会制度の相違があるにもかかわらず、両国は、平和友好関係を樹立すべきであり、また、樹立することが可能である」と明記している。50年後のこんにちにおいて、われわれがこの一点を達成できない理由はない。

 中国はこれまでも、各国にはそれぞれ自国の国情に適した発展の道を選択する権利があると主張してきた。昨年は中国共産党設立100周年で、近代以降の中国の100年におよぶ歴史的な大きな変化は、われわれが中国共産党が指導する中国の特色ある社会主義の道を進むことを堅持してきたのは歴史の選択・時代の必然であったことを力強く証明している。ハーバード大学ケネディースクールは10年連続で中国で民意調査を行ったが、中国の民衆の政府に対する満足度は一貫して90%以上を保っていた。世界最大の広報コンサルタント会社エデルマンが発表した2021年の信頼度調査「トラストバロメーター」によると、中国の民衆の政府に対する信頼度は91%に達し、世界トップだった。西側の機関が行った調査であっても、中国の党と政府が人民大衆の心からの擁護と支持を得ていることを十分に示している。われわれは自ら選択した制度と道に対する自信に満ちているが、発展モデルを輸出しようとはせず、制度の競争をやらず、他国の内政に干渉することはないし、いかなる国を変えようとも思わない。中日両国は共に和して同じないことを提唱しており、双方は相互尊重と対等な付き合いを堅持し、相互の差異を包摂し、より多くの善意と誠意を示すべきだ。

 第二に、いかにして競争と協力の関係を正しく処理するかだ。中国は現在発展し強大になり、経済の総量と一部の具体的な分野で日本を超えたが、中国は日本のライバルになったのだろうか。歴史を振り返ると、日本は最も早くから中国の改革開放に参加し、これを支持した国の一つであり、多くの企業と友好的な人々が中国の経済建設に重要な貢献を果たした。それと同時に、日本企業は中国に深く根を下ろし、中国の経済成長の高速車に乗り、中国市場で大きな成功を収めた。現在、日本の対中投資は累計で1200億ドルを超え、在中の日本企業は3万社を超え、日本を含む外資企業は中国経済の重要な一部になっている。中日の貿易額は日本の対外貿易総額の4分の1近くを占め、これは日本と米国および欧州連合(EU)との貿易額の合計に相当する。多くの日本企業にとって、中国市場はその発展戦略において大きな地位を占めている。中日両国は早くから相互依存・密接不可分の利益共同体になっている。

 中日の経済貿易協力は一貫して互恵ウィンウィンの模範であり、これまでと同様、今後もそうであるべきだ。われわれは勝敗多寡の競争のロジックに中日の経済貿易関係を主導・定義させてはならない。われわれは競争を消し去ることはできないが、競争は必ず公平な競争・開かれた競争であるべきであり、競争のために協力の扉を閉じてはならない。重要なのは共同で協力の「パイ」を大きくし、より幅広い協力の中で相互に促進し合い、それぞれに成果をあげ、協力が一貫して主旋律になるようにすることだ。現在、日本の国会では経済安全保障推進法案の審議が行われている。外界はこの立法の目的が中国に対する防衛と制限であり、中日の経済貿易のつながりを弱める、ひいては引き裂くためであると一般的に見ている。いかなる国であっても自身の経済の安全を守ろうとすることは過度に非難すべきでないが、経済安全保障の概念を乱用して、市場の法則に背き、正常な経済貿易・科学技術協力に対して障害を設置するべきではないし、それ以上にそれを他国に圧力をかけ、封じ込める口実と手段にするべきではない。日本がより自信を持ち、開かれた姿勢を示し、中日の互恵協力がよりハイレベルにまい進するよう共同で後押しするよう希望する。

 第三に、中日が国際・地域問題において引き受けるべき責任をどう認識するかだ。中国は国際社会でどのような役割を果たしているのだろうか。われわれの立場は明確である。中国は責任ある大国として、一貫して独立自主の平和外交政策を堅持し、世界平和の建設者・世界発展の貢献者・国際秩序の擁護者を揺るぎなく務める。先ごろ行われたボアオ・アジアフォーラムの年次総会において、習近平主席は基調講演の中で、各国が平和・発展・協力・ウィンウィンの時代の潮流に順応し、人類運命共同体の構築という正しい方向に向かい、手を取り合って試練に立ち向かい、協力して未来を切り開こうと呼びかけた。習主席は、人類は不可分の安全共同体であると強調し、「世界安全イニシアチブ」を提起し、世界の安全ガバナンスのジレンマを解消し、世界の平和・安寧を擁護するために中国の知恵と中国のプランを提供した。

 もし日本の一部の人が狭苦しい地政学的視点でもって、陣営対立の冷戦思考に執着するのであれば、自然と中国にさまざまな「目障りさ」を感じ、中国を脅威、さらには敵とみなし、隣国を自国の洪水のはけ口にする道に進むだろう。一方で、視野と枠組みを広く開き、地域と世界の全局の高みにたてば、中日間には幅広い共同の利益と共同の関心事が存在することに気付くだろう。世界経済の復興後押し、地域の発展協力促進、地域のホットな問題の解決、さらには新型コロナ・気候変動・テロリズムなど世界的な課題への対応のどれにおいても、双方ができること、するべきことは非常に多く、なおかつ協力の喫緊性も非常に強い。日本が戦略的な独立自主を保ち、客観的かつ公正に中国の立場と主張を見、中国と共に努力し、地域と世界の発展を促進するために積極的な貢献を多くするよう希望する。

 孔大使は、ウクライナ問題における中国の立場と主張を全面的に説明するとともに次のように強調した。ウクライナ危機は、一国の安全保障は他国の安全保障を損なうことを代価としてはならず、地域の安全保障は集団的な対立によって実現することができないことをあらためて証明した。中日および地域国が今回の危機から得た警告は、ようやく得られた平和と安定を大切にするべきであり、冷戦思考を地域で再燃させてはならず、地域を集団的対立の戦場にしてはならず、ウクライナ危機をわれわれの身の回りで再演してはならないということである。

 孔大使は次のように述べた。国交正常化50周年というこれまでのことを引き継ぎ、新しいことを開く重要な年にあって、双方に期待するのは、共に努力し、共同で歴史的経験の啓発をくみ取り、当面のチャンスと試練を把握し、中日関係の前途と未来を思考して描き、今年、中日関係が新しい時代にまい進するための新たな起点となるよう後押しすることである。次の50年間がより素晴らしいものになるようにするため、双方は以下のいくつかのことにしっかりと取り組むべきだ。

 第一に、平和友好の初心を堅守しなければならない。中日が平和で友好的であらねばならないというのは、当たり前のスローガンではなく、中日関係のプラスとマイナスの両面の経験の高度な要約であり、中日平和友好条約で明確に規定されている法的な義務でもある。中日関係の情勢がどのように変化しても、どれだけ多くの困難に見舞われても、双方は共に平和友好の初心が揺らがないようしっかりと堅持し、中日関係が一貫して正しい方向に沿って長期的に安定するよう後押しするべきだ。

 第二に、協力ウィンウィンの旗を高く掲げなければならない。中日の経済貿易協力は一部のネガティブな干渉を受けているが、ベースは依然として安定しており、発展の潜在力が依然として大きく、いまなお両国関係の発展を後押しする重要なエンジンである。両国の経済界は協力に対する自信を突き固め、実務協力を絶えず深化させ、協力の質とレベルを引き上げ、新しい成長点をつくり、育て、双方の共同利益を持続的に大きくし、よりハイレベルな互恵ウィンウィンを実現するために努力しなければならない。われわれは一貫して日本を重要な協力パートナーとみており、日本企業が中国との協力の中でより大きな成功を収めることを楽観視している。

 第三に、しっかりとした民意の支えを築かなければならない。民間の友好は中日関係の優れた伝統だが、中日関係のムードと新型コロナの流行などの要因の影響を受け、両国の民間レベルの行き来が阻まれ、交流が円滑でなくなっており、交流が乏しくなれば次第に互いに疎遠になるものである。双方は積極的に行動を起こし、人文〈人・文化〉交流および民間・地方の交流を幅広く展開し、交流の温度を保ち、両国民衆の相互理解を増進し、民意悪化の勢いを転換させなければならない。中日関係の未来は若い世代に託されており、双方は青少年の交流を強化し、友好の伝統を伝承して発揚し、中日の友好事業の灯を伝えていかなければならない。

 第四に、矛盾と意見の相違を効果的に管理・コントロールしなければならない。歴史が繰り返し証明するように、中日関係の良しあしは、かなりの程度矛盾と意見の相違をしっかりとうまく管理できかどうかにかかっている。正しいやり方は現実を直視する勇気を持ち、信頼と約束をしっかり守り、中日の四つの政治文書および関係の共通認識〈コンセンサス〉の精神に基づいて、デリケートな要因を適切に処理し、リスクの管理・コントロールを強化し、両国関係の平穏な発展のために障害を取り除くことである。一部の政治勢力が矛盾を激化させ、問題を引き起こすことや、外部勢力の介入を呼び込もうとすることを放任すれば、両国関係を危険な場所に追いやるだけである。

 第五に、積極的に国際責任を果たす。中日は地域と世界の重要な国であり、双方は時代の潮流に順応し、積極的に責任と役割を発揮し、共同で真の多角主義を実践し、国連を中核とする国際体制を擁護し、多国間の分野における意思疎通・協調・協力を強化し、共同で地域と世界の平和安寧・団結協力・発展繁栄を促進するためにしかるべき貢献を果たすべきだ。

 孔大使は人民政治協商会議全国委員として中国で「両会」〈全国人民代表大会と中国人民政治協商会議〉に参加した経験に結び付けて、中国の発展情勢を全面的に説明し、現場で中日の経済貿易協力、中国の外資政策、両国の青少年交流などに関する質問に回答した。

 佐藤会長および日本の出席者は交流イベントで次のように述べた。国交正常化からの50年間、日中両国は互いに良き師、良き友として、競争しながら協力し、各分野の交流と協力を後押ししてこれを日ましに堅固で緊密にし、緊密で不可分の重要な隣国になっている。50年後のこんにち、世界情勢の巨大な変化の中、双方がこれまで以上に国交正常化の歴史の中から経験をくみ取り、両国各界の先達(せんだつ)らの努力の成果の基礎の上で、次の50年に向かい、共同で未来志向の両国関係を築くことは、時代が双方に与えた使命である。両国の企業界はそのために重要な責任を担っており、積極的に民間の力を発揮し、引き続きたゆまず努力すべきである。