中央ラジオテレビ総局『藍庁観察』 孔鉉佑駐日大使単独インタビュー
2022-05-29 08:52

 孔鉉佑駐日大使はこのほど、中央ラジオテレビ総局の番組『藍庁観察』の単独インタビューに応じ、主に中日関係、日米首脳会談、米国の「インド太平洋経済枠組み(IPEF)」などについて記者の質問に答えた。インタビュー内容は以下の通り。



 ――5月23日に日米首脳会談が行われ、共同声明が発表されましたが、中国に関する話題が数多く取り上げられ、中国に対する否定的な発言や非難が相次ぎました。これについてコメントは。いわゆる「日米連携による対中対抗論」をどうお考えですか。

 バイデン米大統領の訪日は各方面の大きな関心を呼び、中国を含む地域諸国や国際社会は、今回の訪問でどのようなシグナルが放たれるのか、また、日米同盟がこの地域でどのような役割を担おうとしているのかを見ています。事実が証明しているように、バイデン大統領の訪問は米国がうたうような「東アジアの平和と繁栄のため」などではなく、「自由で開かれたインド太平洋」を名目に、日米が実質的に冷戦思考を復活させ、地域対立を誘発し、陣営対立を生み出し、同盟による抑止を声高に叫び、地政学ゲームの「小さなグループ」をつくることに狙いがあります。これは完全に時代の潮流に逆行するものであり、地域諸国の努力によって築かれた平和的発展の勢いを破壊し、地域の全体的、長期的利益を損なうものであり、地域諸国は大きな警戒心を抱かざるを得ません。

 日米首脳会談など一連のやりとりでは、中国の核心的利益に関わる問題であおり立て、中国に対して根拠のない非難や中傷を行うなど、中国に関するネガティブな論調に満ちていました。中国を包囲し封じ込めようとする米国のよこしまな意図と米国の対中戦略に進んで協力する日本の消極的な傾向があらためて露呈しました。冷戦の産物である日米同盟が一緒になって対抗し、ゼロサムゲームのまね事をすれば道義に反し多くの支持を失い、歴史的にも行き詰まるだけです。中国はすでに日米双方に対して厳重な申し入れを行い、強烈な不満を表明しました。日米同盟が歴史の大勢に従い、大国間競争や陣営対立を誘発することをやめ、すっかり時代遅れになってしまった冷戦シナリオをアジア太平洋地域で二度と繰り返さないことを強く促します。

 100年に一度の変化と世紀の感染症が重なった今、世界が最も必要としているのは団結と協力であり、地域が最も待ち望んでいるのは平和と安定です。中国はつねに世界平和の建設者、世界発展の貢献者、国際秩序の擁護者であり続け、平和を愛し発展を求めるすべての国と一緒に団結と協力を強化し、手を携えて試練に立ち向かい、グローバル発展イニシアチブとグローバル安全保障イニシアチブの実施を後押しし、人類運命共同体を構築することを望んでいます。中国は自国の主権、安全保障、発展の利益を揺るぎなく守り、アジア太平洋地域の平和、安定、永続的繁栄を揺るぎなく維持し、この地域に混乱と混迷を引き起こすいかなる勢力も決して許すことはありません。

 日本はアジアの一員として、また中国の近隣国として地域の平和、安定、繁栄のために建設的役割を果たすべきであると考えます。しかし、日本がこの地域でどのような役割を果たそうとしているのか、また、戦略的に何を目指しているのか、その一挙一動に私たちは強い懸念を抱かずにはいられません。中国が強調したいのは、他人のために火中の栗を拾うのは自分も他人も傷つけるだけであり、自己利益のみを考えて他人の迷惑を顧みない行為は長続きせず、うまくいくはずがないということです。現在の中日関係は重大な岐路に立たされています。日本が中国に対する意識を正し、戦略的方向を修正し、建設的で安定した対中関係を築く姿勢を真に実行してこそ、中日関係にさらなるダメージを与えるのを回避することができ、地域の安定と繁栄に真に責任を持つことができるのです。

 ――バイデン米大統領は日本を訪問中、インド太平洋経済枠組み(IPEF)の立ち上げを発表し、日本は参加する立場を明確にしました。アジア太平洋地域にはどのような真の協力が必要だとお考えですか。

 米国がIPEFの立ち上げを発表し、日本を含むいくつかの国がこの枠組みに参加する意向を表明していることに留意しています。中国は、地域諸国と同様に地域協力の強化に資する提案を歓迎し、分断と対抗を生み出そうとする試みに反対すると何度も表明してきました。米国が外部に向けて発表した情報からも、米国の自己利益に照準が当てられた枠組みであり、米国の地政学的戦略のためのものであることが伺えます。もし米国がこれを利用して米国主導の貿易ルールを確立し、この地域に排他的な経済「クラブ」をつくり、さらには地政学的な競争を行って他国を強制的に味方につける政治の道具として利用しようとすれば、必ず各国の人々から拒絶され、時代の発展から見放されることになるでしょう。

 アジア太平洋地域は中国の安定のよりどころ、発展、繁栄の基盤です。激動の変化と混沌(こんとん)の時代にあって、中国はつねに安定とプラスのエネルギーを代表し、アジア太平洋協力の正しい方向を積極的に提唱、推進、維持してきました。「一帯一路」を世界最大の国際協力プラットフォームに育て上げ、「地域包括的経済連携協定(RCEP)」の調印、発効、質の高い実施を推進し、「包括的及び先進的な環太平洋パートナーシップ協定(CPTPP)」への加盟を正式に申請し、この地域の経済回復を促進し、地域の平和、安定、発展の維持に努めています。アジア太平洋地域の協力を促進するためには次のような点が必要だと考えています。

 第一に、オープンで協力的な姿勢を堅持することです。 開放性と包括性、互恵とウィンウィンはアジア太平洋地域協力の重要な原則であり、成功の経験です。アジア太平洋協力は差別や排除、既存のメカニズムの弱体化や分断、さらには経済問題の政治化や地政学ゲームの企てに従うのではなく、経済協力と団結を促進し、共同利益のパイを大きく強くし、各国の人々に実益をもたらすことに資するものでなければなりません。

 第二に、自由貿易を堅持することです。形を変えた保護主義を展開し、既存の地域協力の枠組みにダメージを与えて地域統合を後退させるのではなく、感染症の影響に対処し、地域の融合と発展を加速させ、アジア太平洋自由貿易圏の構築を促進し、平等な協議、共同参加、普遍的受益という開かれたアジア太平洋経済を構築し、世界経済の回復と成長により多くの「アジア太平洋のチャンス」をもたらすために助け合う必要があります。

 第三に、産業チェーンの安定性と円滑性の維持の堅持です。アジア太平洋各国は多様性が際立ち、資源の賦存がそれぞれ異なっており、安定した産業チェーン、サプライチェーン、バリューチェーンを構築し、すべての域内国に巨大な発展のボーナスをもたらしました。人為的に「小さな庭の高い塀」と「平行システム」をつくり、経済のデカップリング(切り離し)、技術の封鎖、産業チェーンの分断を唱えることは地域の利益を損ない、各国の共同発展の空間を圧迫することになります。

 ――今年は中日国交正常化50周年にあたりますが、両国関係発展のための喫緊の課題は何だとお考えでしょうか。特に両国関係を阻害する要因を取り除くために、日本は実際にどのような態度や措置を取るべきでしょうか。

 今年は中日国交正常化50周年であり、両国関係において重要な歴史的節目となる年です。昨年、両国の指導者は新時代にふさわしい中日関係構築の推進について重要なコンセンサスに達し、両国関係発展の基本的な指針となりました。王毅・国務委員兼外相は先ごろ、林芳正外相とビデオ会議で会談し、中日関係について深い意見交換を行いました。中国からは中日関係をいかに維持、強化、発展させるかについて三つの要望が出されました。それは進むべき方向への助言であり、利害に関する助言です。

 現在、中日関係は厳しく複雑な状況に直面しており、進まなければ後退するという重大な岐路に立たされています。日本は中国と歩み寄り、両国指導者の重要なコンセンサスを的確に実行し、国交正常化の初心に立ち返り、中日の四つの政治文書の精神を守り、中日関係を挫折させず、停滞させず、後退させず、健全で安定した発展を実現させなければなりません。重要なのは次の点です。

 まず、発展の方向性を正しく把握することです。平和・友好・協力の堅持は中日関係の正反両面の〈肯定的・否定的な〉経験を高度に凝縮したものであり、中日平和友好条約に明確に規定された法的義務でもあります。中日関係が厳しく複雑になればなるほど、この初心をぶれずに貫くことが大切になってきます。日本が中国を理性的かつ客観的に見つめ、「互いに協力パートナーであり、脅威とならない」という政治的コンセンサスを政策に反映させ、行動で体現することを希望します。

 第二に、より高いレベルの互恵ウィンウィンを実現することです。中日の経済貿易協力は大きな発展の可能性を秘めており、一貫して両国関係の「バラスト」であり「推進器」であり続けています。双方は協力の潜在力をより深く掘り下げ、新たな成長点を育成、創造し、共同利益を拡大し続けるべきです。日本は経済安全保障を理由に通常の経済・貿易・科学技術の協力に制限を加えることを避け、公正で開かれた貿易・投資環境を維持し、産業チェーン・サプライチェーン(供給網)の安全と安定を守るべきです。

 第三に、さまざまな阻害要因を速やかに排除することです。歴史や台湾など中日関係の政治的基礎に関わる主要な原則的問題において、日本は中日の四つの政治文書の精神とこれまでの約束を固く守り、一線を越えてはならず、両国関係にこれ以上深刻な影響を与えないようにしなければなりません。具体的な紛争に直面した場合、双方はコンセンサスを順守し、外部要因による干渉を排除し、小異を残して大同に就くことを堅持し、リスクのコントロールを強化する必要があります。一部の政治勢力が対立を激化させてトラブルを起こすのを放任し、または外部勢力を引き入れて介入させようと企てるなら、中日関係は危険な状況に追い込まれることになるでしょう。

 第四に、世論の確かな支持を得ることです。双方は国交正常化50周年を契機に官民挙げて記念行事を計画し、柔軟な方法で各分野の交流を強化し、もっと多くのプラスのエネルギーを凝集するべきです。地理的に近接し、文化的にも相通じるという中日の利点を十分に発揮し、より広範な人的・文化的交流を行い、交流の赤字を解消し、心のふれあいを深め、マイナス傾向にある世論を逆転させ、両国関係の発展のために前向きな世論と社会の雰囲気をつくる必要があります。