駐日中国大使館報道官、日本福島放射能汚染水海洋放出問題について立場を表明
2023-07-04 17:07

 2023年7月4日、駐日中国大使館報道官は日本福島放射能汚染水海洋放出問題について立場を表明した。全文は以下の通り:

 福島核汚染水の海洋放出は各国国民の健康、世界の海洋環境並びに国際的公共利益に関わる問題として、国際社会から広く注目されている。今まで中国側が既に本件について日本側に繰り返し厳正な立場と懸念を表明した。日本側には、 国内外の正当で合理な懸念に直視し、国際法上の義務を履行する形で、科学、歴史、世界の海洋環境、全人類の健康および子々孫々に責任ある態度でもって、科学的、 安全、透明性のある方法で核汚染水を処理し、厳格な国際監督を受け入れるよう希望する。

  海洋放出に正当性にかけている。日本側が周辺近隣国など利益関係者と効果的な協議を経ず、一方的に海洋放出という誤った決定を下し、一方的にそれを発表するやり方は実際、海洋放出を唯一のオプションとして各国に押し付けようとしている。しかし、海洋放出は唯一のオプションでも、最も安全で、最善の対策でもない。海洋放出のほか、地層注入、水蒸気放出、水素放出と地下埋設などの対策が提起され、長期保存という方法を提案する専門家もいたにも関わらず、全部日本側に無視されてきた。まさか海洋放出が最善策であるのか。明らかにそうではない。

  海洋放出によって、世界海洋環境および人類の健康に大きなリスクがもたらされる。福島核汚染水が福島原発事故で融解した原子炉の炉心と直接接触したもので、60種類以上の核種が含まれる。トリチウム以外にも有効性が認められる浄化技術がない核種が多数ある。そのうち、半減期の長い核種によって、 海流による拡散、そして生物濃縮が発生し、環境中の放射性核種の全体量の過剰増加を招きかねない。福島原発事故が今まで130万トン以上の核汚染水を形成しており、これほど莫大の量の、さらに成分が複雑である核汚染水の処理には前例がない。海洋放出が30年、ひいてはもっと長く続き、将来には新たな核汚染水の大量発生が予想される中、ALPSの有効性と完成度が第三者による評価を経てないため、装置の長期にわたる信憑性がまだまだ疑間が残っている。

  海洋放出を強行するのは国際法上の義務に違反する。国際法や国連海洋法条約などの規定により、日本側には海洋環境を保護、保全する義務があり、管轄または支配活動が他の国およびその環境の汚染を防ぐよう、あらゆる必要な措置をとることが求められる。日本側が十分な協議、アセスメント、環境モニタリングなどの義務を履行し、予防措置をとり、リスクの最小化を確保すべきである。他にも、日本側が海底トンネルを利用して核汚染水を海に放出することは、1972年『ロンドン条約』における、人工海洋構造物を経由する放射的廃棄物の投棄を禁止する規定に違反している。国際社会の責任ある一員として、日本がこれらの国際義務を着実に履行することが求められる。

  IAEAのレビューは日本が海洋放出するグリーンパスにはなれない。日本政府が2021年4月に海洋放出の計画を発表、2022年7月に計画を正式に認可、そして何度も放出の延期はないと表明している。これらはいずれもIAEAのタスクフォースがレビューを完成し、報告書を発表する時点よりはるかに早い段階で行われ、日本側の誠意について国際社会でも大きくクエスチョンマークがつけられている。機能と権限においても、IAEAは原子力の安全、信頼可能な、そして平和的目的の利用を促進する国際機構で、核汚染水による海洋環境や生物の健康への長期的影響を評価する適切の機構ではない。さらに指摘したいのは、IAEAのタスクフォースが他の対策を評価することを拒否するなど、機構の権限を制限しているのも日本側である。以上の観点から、IAEAの報告書では日本側が海洋放出を行う正当性、合法性を証明することができず、日本側が担うべき道義上の責任と国際法上の義務を免除するものでもない。IAEAが客観かつ公正な原則でもって、タスクフォース各方面の専門家の意見を十分に尊重し、取り入れた上で、まもなく発表される包括的報告書が科学、そして歴史の試練に耐えられるものであると期待している。

  日本側が福島核汚染水のトリチウム量と原発が正常に排出される冷却水のそれと同列に扱うのは、ストローマン論法であり、故意に世論をミスリードするように見える。福島核事故によって発生した核汚染水と原発の正常な運行による排出水とは本質的に違うのは基本の科学的常識である。両者には発生源も、放射性核種の種類も異なり、比べ物にはなれない。原発事故での融解炉心と直接接触した福島汚染水には猛毒とされているプルトニウム、アメリシウムなど超ウラン核種が含まれ、それらを海洋放出する前例はない。一方で、世界中の原発で何十年も安全に運行し、信頼されているシステムで処理した原発の排出水はそれとまったく別のものである。日本側が希釈で核汚染水の放射性物質の濃度を下げようとしているが、全放射性核種に対して全体量のコントロールを行わず、海洋放出の危害性を軽減化、隠蔽しようとしていることこそ、科学精神やプロフェショナリズムに背を向ける現れである。

  日本側のいわゆる中国側と協議したいという言い方から誠意が感じられない。今までバイやマルチの場で日本側と交流し、専門機関の意見や懸念を重ねて表明したにもかかわらず、中国側の立場を顧みず、規定のスケジュールで海洋放出をかたくなに進めている。もし日本側が今夏の放出開始を協議の前提として、自らの主張を中国側に押し付けようとするのなら、このような協議に実質な意義がないように思われる。もし本当に協議する誠意があるのなら、まず海洋放出計画を直ちに中止にし、それ以外あらゆる可能な対策を検討することや、利益関係者による独自のサンプリングと分析を容認することなど、確実に各方面の懸念を払拭するべきである。