程永華駐日大使,TBSラジオ番組に出演
2015/07/06

    6月23日、程永華駐日大使はTBSラジオのニュース情報番組「荒川強啓デイ・キャッチ!」に出演し、中日関係、歴史問題、安倍首相談話、南海問題などについて司会者の質問に答えた。一問一答次の通り。

    司会者:当番組にようこそ。程大使は2010年から中国特命全権大使に任命され、日中関係が困難な時期を経験された。今年に入り、双方の関係がやや回復しているようだが、現在の日中関係をどう見ておられるか。

    程永華:周知の原因により、近年、中日関係は国交正常以来最も困難な状況に陥っていた。昨年11月、双方は中日関係の処理と改善に関する4項目の原則的共通認識を得て、この数年間の中日関係を総括し、今後の関係改善と発展のためのルールを定めた。その後、両国の指導者がAPEC会議の期間中に会見し、両国関係は改善に向けて重要な一歩を踏み出した。今年に入り、中日政府間対話・協議や各分野での交流と協力が徐々に再開さている。4月に習近平主席がジャカルタで安倍首相と会見し、両国関係の改善と発展に新たな原動力が与えられた。5月に習近平主席が中日友好交流大会に出席して重要演説を行い、両国関係の改善と発展に対する中国の前向きの意思と誠意が示されるとともに、両国関係の長期的な発展のための方向が示された。両国関係が曲折を経て今日の成果が得られたのは容易なことではなく、一緒になって大切にすべきである。双方が友好交流と協力の強化を続け、中日関係のさらなる改善と発展を促すため努力することを希望する。

    司会者:4月に安倍首相が米議会で演説を行った。関係国は歴史問題で謝罪に言及しなかったことを厳しく批判した。歴史問題をどのように見ておられるか。

    程永華:われわれは安倍首相が訪米した際、歴史問題で示した姿勢に留意している。だが、その後まもなく、欧米の数百人の歴史学者が共同声明を発表し、日本政府に歴史問題を直視するよう促した。日本国内の数千人の学者も声明を発表し、政府に対し慰安婦の史実から逃げないよう求めた。これらはすべて、戦争から70年が経過しても、歴史問題が依然として日本の直面する重要な課題であることを示すものであり、日本はまずこの点をはっきり認識しなければならない。

    中国の歴史問題に対する立場は明確で一貫している。われわれは、かつて日本軍国主義が起こした侵略戦争は中国人民に一大災難をもたらし、日本人民にも大きな被害を受けたと考えている。われわれは一貫して軍国主義者と一般の日本人民を区別してきた。習近平主席はこのほど、中日友好交流大会で日本人民もあの戦争の被害者であると再度強調した。戦後、中国は100万人の日本人が故郷に帰るのを助け、物資が極度に不足する状況の中、数千人の日本の戦争孤児を自分の子どもとして育て、中国人民の広い度量と大きな愛が示された。われわれは日本が侵略の歴史を深く反省し、正しく認識し、問題を適切に処理するよう促している。また両国の人民同士の交流を強化することで、人々にあの歴史を正しく認識させ、戦争の残酷さと平和の尊さを理解させ、戦争の悲劇が二度と繰り返えされないよう希望している。

    司会者:日本国内には中国が「歴史カード」を利用して日本を抑えつけていると考える人々がいるが、どう見られるか。

    程永華:こうした見方は間違っており、事実に反するとはっきり言える。1972年の中日国交正常化交渉の際、双方は歴史問題をどう処理するかについて共通認識を得ていた。「中日共同声明」にも「日本側は、過去において日本国が戦争を通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、深く反省する」と明確に述べられている。これ以降も、日本はさまざまな場でこの立場を繰り返してきた。最も代表的なのは1995年に当時の村山富市首相が閣議決定を通じて「村山談話」を発表し、過去の国策の誤りを認め、歴史の事実を謙虚に受け入れると表明するとともに、侵略に対する深い反省と心からのお詫びを述べたことだ。これらの声明と談話は日本国を代表した態度表明と約束である。しかし遺憾なことに、日本国内ではつねに一部の人さらには要職者や一部の政治勢力がこれに反した言動をしている。靖国神社、慰安婦、歴史教科書などの問題が典型的な例だ。加害者のこうした言動は被害国の人々を深く刺激し、傷つけており、いきおい侵略の歴史に対する日本の本当の態度と誠意に疑念を抱かせることになる。歴史問題に関する紛争が長年収束しない原因を突き詰めると、根はやはり日本側にある。

    司会者:安倍首相の戦後70年談話について、最新の報道によると、安倍首相は個人として談話を発表するらしいが、中国はこれをどうみるか。

程永華:関連の報道に留意している。これは日本政府が決めることだ。だが今年は中国人民の抗日戦争勝利70周年に当たり、日本がこれを契機に過去の侵略の歴史を真剣に総括し、歴史を鑑とし、未来に向かうことが出来るか否か、非常に大事な節目になると言えることを強調したい。日本が戦後70周年を一つの機会とし、過去の軍国主義による侵略の歴史と完全に一線を画し、まったく新しい1ページを開き、歴史を鑑とすることを踏まえ、アジアの隣国と未来志向の関係を発展させることを希望する。

    司会者:安倍談話で中国が主に関心を寄せているのは何か。

    程永華:かつての被害国である中国は当然ながら、中国とアジア各国を侵略した歴史の責任に対する日本の態度に関心を寄せるだろう。これは日本とアジアの隣国との関係発展にとどまらず、日本の今後の方向性にもかかわるからだ。

    司会者:それは中国が談話の中に「反省」、「謝罪」といった文言を盛り込むよう要求することを意味するのか。

    程永華:今は中国がいくつかの言葉を盛り込むよう要求するかどうかといった問題ではなく、日本がどうすべきかという問題であり、日本がどのように歴史を総括し、被害国の人々に反省と誠意を示すのかという問題だ。かつての加害者が被害者に対し、どのように反省の誠意を示すのかは非常に重要である。侵略の責任を故意に希薄化し、さらには否定するようなことがあれば、被害者の傷を再びえぐることに等しい。

ドイツのワイツゼッカー元大統領はかつて、過去に目を閉ざす者は結局、現在にも盲目となる、暴挙を反省しない者は、過ちを繰り返すと述べた。今年3月にメルケル首相が来日した際も、過去の清算は和解のための前提だと述べた。こうした知見は日本の良い参考になるだろう。

    司会者:日中関係には問題が多く、しばしば表に出て来て両国関係を妨害する人々がいる。中日関係を安定した発展の軌道に戻す良い方法があると思われるか。

    程永華:この数年、中日関係で重大な曲折が起きた教訓をくみ取るべきだ。中日が現在直面している問題は新しい問題ではない。双方はかつてこれらの問題をどのように解決するかについて共通認識あるいは了解を得るとともに、関連のルールを定めた。その内容はいずれも中日間の四つの政治文書と4項目の原則的共通認識で明確に述べられている。双方が約束を守り、関連のルールを順守すれば、中日関係は着実に発展することができる。逆ならば、両国関係に曲折が生じることになる。これは長年、中日関係が発展する過程での法則的な現象だ。たとえば、歴史問題が典型的な例である。まさに日本が過去の約束にたびたび背き、再三もめごとを起こして被害国人民の感情を傷つけるからこそ、戦後70年経った今日でも、歴史問題はなおも日本と隣国との関係を悩ませているのだ。

    司会者:「信義」は日中関係の安定と発展にとって非常に重要であるということか。

    程永華:中日国交正常化交渉の際、周恩来総理が田中角栄首相に「一度言った約束は守り、行なう以上は必ずやり遂げる」と述べ、田中首相はこれに「信は万事の本なり」と応じた。両国の先輩指導者は「信義」を重視し理解していたということだ。日本が確実に信義を重んじるようにし、中日の四つの政治文書と4項目の原則的共通認識を厳格に順守し、本当に「歴史を鑑とし、未来に向かう」精神にのっとり、中国と互いに歩み寄り、相互信頼を積み上げ、築き、中日関係を長期的に安定して発展させるため努力するよう希望する。

    司会者:ある調査によると、日中双方の8割以上の回答者が相手に好感をもっていないことが明らかになったが、何が原因だと考えておられるか。

    程永華:近年、中日間に歴史、領土などの問題が同時に発生し、からみ合い、両国関係は重大な困難に直面している。双方の国民が相手に対して疑念さらには警戒心さえも抱いており、これが双方の国民の好感度が低下する大きな原因になっているのかもしれない。同時にわれわれは、同じ調査で双方の7割を超える回答者が両国関係を非常に重要として中日関係の改善を望んでおり、両国の民意が示されていることにも留意している。

    司会者:こうした状況をどうやって改善すべきだと考えておられるか。

    程永華:国の交わりは民の相親しむにありという。いま相手に対する両国民の感情が低下しているのは、相互理解の不足によって認識にずれが生じていることが大きい。こうした状況の中、双方は各分野での交流を強力に推し進め、両国人民の相互理解と友好的気持ちの増進に努めるべきだ。先月、自民党の二階俊博総務会長が3000人余りを率いて訪中した際、北京で中日友好交流大会が開かれ、中日各界の人々が「中日友好交流大会アピール」を共同発表した。習近平主席が大会で重要演説を行い、中国政府が両国の民間交流を支持することを表明し、両国の各界、特に若い世代が中日友好事業に身を投じるよう熱心に励ました。われわれは両国の人民が友好の信念を固め、積極的に行動し、双方の友好交流と協力を強化し、中日関係の改善と発展のためより多くのプラスエネルギーを集積させるよう期待している。こうすれば双方の国民感情もたえず改善されるだろう。

    司会者:ご回答ありがとうございます。次にほかの話題に入りたいと思う。一頃から、南海問題が国際社会の関心の的になり、関係国が中国は南海で大規模な埋め立て工事をしていると非難している。中国が南海でこのような建設を進める目的は何か。

    程永華:まず、中国が南沙群島とその近海に争う余地のない主権を有していることを指摘しておきたい。中国が自国の島・岩礁で建設作業を行うことは完全に主権の範囲内のことであり、外部に干渉・非難する権利はない。島・岩礁の建設は主に駐屯要員の作業と生活条件を改善するとともに、海上保護や捜索・救助、気象観測、海洋環境保護、漁業生産など中国が担っている国際的責任と義務をより良く果たすためだ。

    司会者:中国は南沙群島の領有権を主張している他国にどのような態度をとるのか。周辺国の反応をどう見ているか。

    程永華:南沙群島は中国固有の領土であり、中国は漢・唐の時代に最も早く南沙群島を発見し、真っ先に命名し開発・利用した。第二次世界大戦終結時、「カイロ宣言」と「ポツダム宣言」に基づき、中国は日本の手から南沙群島を取り戻した。1970年代初めまで、南海の島・岩礁にはいかなる紛争もなかった。70年代以降、東南アジアの一部の国が中国南海の一部島・岩礁を不法占拠するとともに、関連の島・岩礁で盛んに土木工事を続けた。関係国はこれには目をつぶり、黙っていながら、中国の合法的な建設作業だけをさかんに非難している。これはまったくの二重基準であり、アンフェアだ。

    司会者:おっしゃるように、ベトナム、フィリピンは確かに最初に南海の島・岩礁で建設作業を行っており、中国は2013年前後になってから大規模な埋め立て工事を始めた。しかしこの時期、中国は米国と「新しい型の大国関係」を築くことを打ち出している。中国が南海で進める建設作業は米国との「新しい型の大国関係」の構築と矛盾するとは思われないか。

    程永華:まず一つのことをはっきりさせなければならな。つまりわれわれが話しているのは太平洋やハワイ周辺の海域ではなく、南海海域についてだ。中国は自国の主権の範囲内で、自国の領土で建設をしており、域外の国との間にはまったくいかなる衝突〈紛争〉もない。フィリピンなどは不法占拠した島・岩礁に建てた施設をたてに、南海で通常の操業を行っている中国の漁民を勝手に勾留・虐待している。だからわれわれには関連の島・岩礁に施設を建設し、常駐者を派遣して、中国漁民の正常な操業を指導・保護する必要がある。これは完全に主権国家として合法的、合理的で、情理にかなったやり方であり、非難されるものではない。

    司会者:6月21日、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相が訪日し、安倍首相も会見しており、日韓関係に改善の兆しがみられる。日韓関係の動きを中国はどのように見ているか。

    程永華:私は韓国駐在大使だったこともあり、中日韓三カ国関係に比較的関心を寄せてきた。われわれは最近の日韓のインタラクション(相互作用)に留意している。中日、中韓は互いに重要な隣国で、中日間には戦略的互恵関係があり、中韓間には戦略協力パートナシップがある。これらの関係を発展させていくことは三カ国人民の根本的利益に合致する。中韓には歴史問題で共通の関心事があり、われわれは日本が問題を適切に処理し、「歴史を鑑とする」精神にのっとって、アジアの隣国との関係を積極的に改善・発展させていくことを希望している。中日韓三カ国はいずれも地域の重要な国であり、三カ国は前向きのインタラクション関係を築き、互恵協力を進め、人文交流を深め、地域問題での協調・協力を強めて、共に地域の平和、安定と発展のため積極的に寄与すべきだ。