孔鉉佑駐日大使,「朝日新聞」の単独インタビューを受ける
2020-11-04 15:38

1030日、孔鉉佑駐日大使は「朝日新聞」の単独インタビューを受け、中日関係、中米関係を重点的に紹介したうえ、香港、新疆に関わる問題などについて立場を表明した。インタビューの全文は以下の通りである。

問い:日本各界は日中関係に幅広く関心を持ち、習近平国家主席の国賓訪日の時期を注目している。これについての見通しはいかがなのか。来年の東京オリンピックの開催に合わせて、訪問する可能性はあるのか。また、訪問実現に向けて、何か条件があるのか。実現できれば、双方は「第五の政治文書」に調印する意向はあるか。

孔大使:新型コロナウイルス感染症で中日双方の今年の国間往来の予定が狂っており、数多くの外交スケジュールが延期もやむを得なくなった。その中で最も重要なのは習近平主席の日本への国賓訪問である。ハイレベル往来特に習近平主席の国賓訪日の中日関係にとっての重要な意義に鑑み、双方とも今回の訪問を最も適切な時機に、最も適切な環境と雰囲気で実現させ、成功を収めるようにすべきだとの認識を共有している。中国としては日本と各レベルの対話意思疎通を続け、両国のハイレベル往来のために十分な準備を整えるようにしたい。

第五の政治文書に調印するかどうかについて、中国はオープンな姿勢で臨んでいきたい。両国の指導者すでに新時代にふさわしい中日関係の構築について重要な共通認識に達しており、双方はこの重要な共通認識の精神に基づき、適切な形式で中長期的な両国関係の方向を定めるとともに両国国民と国際社会に示す必要があると思う

問い:ハイレベル往来は日中関係にとって特別な意義があり、一般国民の往来も双方にとってとても重要だ。コロナ感染によって止まった日中の人的交流の回復について、どのような見通しか。中国と韓国の間はすでに人的往来の利便をはかるビジネストラックをつくった。日中間は同様な「ビジネストラック」をつくることで、往来の人の14日間の隔離を免除することができるか。

孔大使:新型コロナウイルス感染症の発生後、中日間の経済・貿易および人的往来共に深刻な影響を受けたが、これは特殊な状況下のやむを得ないことで、世界各国が抱える共通の課題でもある。一方、現下の困難は一時的なものにすぎず、両国経済には依然として強い相互補完性があり、人的往来にも大きな回復の余地があることを見なければならない。

各国の国情、感染状況および感染対策は同じではない。これから、双方の政策の整合性はかることが仕事の重点だと考えている。現在、双方の主要任務は各自の感染症対策に取り組みながら、共同予防制御を強化、科学的な措置を講じて出入国問題を適切に処理し、国間の人的往来を漸進的に再開させるべきである。現在、両国の関係省庁は関連する問題について協議を進めており、双方の共通した努力で、早急に合意に達成し、実行することを希望する。

問い:「ビジネストラック」を作るために各自の政策の整合性をはかると言ったが、具体的に何を指しているのか。日本の新規感染者数の抑え込みなのか、あるいは検査能力の向上なのか。

孔大使:「ビジネストラック」をつくる根本的な目的は両国のビジネス往来の利便をはかり、国際旅行がビジネス活動に与える支障、特に時間的なコストを最小限度まで抑えることである。だから、安全性を確保したうえで14日間隔離を免除することこそ「ビジネストラック」の最大のメリットである。世界の感染状況が長期化、複雑化する可能性に鑑み、われわれは関係措置を細かく策定し、実効性を確保しなければならない。現在、中国で約3万社日本企業が操業しており、去年ビジネス関係で訪日した中国人は延べ40万人弱であったそれ以外、短期のビジネス往来の需要も少なくない。現在、中日双方は関係問題について緊密な意思疎通を図っている。そのには複雑な個別問題ある、双方とも早急に「ビジネストラック」を作り、人的往来を回復させようと希望している

問い:日本側が消極的ではないか。

孔大使:そういう意味ではない。ただ双方の具体的な政策に違いがあり、整合性を見つける必要がある。重要なのはいかにすれば双方のビジネス往来需要と両国の感染対策に合致するための最大公約数を見い出すことである

問い:先ほど、習近平国家主席の国賓訪日には適切な雰囲気が必要だと言及した。現在、日本の対中世論はなかなか厳しい。その大きな原因として言われているは釣魚島問題。日本側から見て、中国は対日関係の改善に前向きな姿勢を示している一方、中国公船の釣魚島周辺での活動も活発化している。一見すると矛盾した動きにも見えるが、その意図はどこにあるのか。

孔大使:釣魚島問題における中国の立場は一貫して、明確的なもので、日本側はそれをよく知っている。双方は互いに立場が異なるという現実を直視し、両国関係の長期的な発展を考慮した上、関連問題を善処すべきである。まず、釣魚島問題について、双方とも受け入れられる形で解決しなればならないこれは一朝一夕に実現できるようなことではない。当面の急務は危機管理をしっかりし、不測の事態を防ぐことである。これ双方の知恵が必要である。第二は2014年に双方中日関係に関する4項目の共通認識達し、中には釣魚島問題を処理する重要な原則も明記されている。双方はこうした共通認識に切実に従わなければならない。第三は両国政府はともにしっかり努力民意の対立をあおりたて、両国関係の大局に影響することを防止すべきである

問い:釣魚島問題に関して、中国側が事態をエスカレートさせていると見る日本人も数少なくない。これについてどう思か?

孔大使:それ全く誤解である。釣魚島の事態をエスカレートさせることは中国にとってメリットない。同時に、釣魚島に対する主権的立場に基、われわれは主権を守るためのしかるべき措置をとる権利がある。中日関係を改善発展の方向に持っていくのはわれわれの一貫した立場である。当面、重要なのは違いを適切にマネジメントすることであるこのために、双方が政治的知恵を絞る必要がある。両国国民からの理解と支持も欠かせない

問い:もうひとつ日本の対中世論を影響するのは香港の問題だ。日本国民は強く関心を持っている。香港国家安全維持の実施によって、日本人が日本で行う言論行為もこの法律で処罰されるということを意味しているのか。

孔大使:香港に関連する問題を見るときは二つ基本的ポイントをおさえておく必要がある。第一は、香港特別行政区は中国の一部で、香港事務は中国の内政に属する。第二は、国家安全に関する事項は中央政府の権限に属しており、これは世界各国の慣行であって、中国も例外ではない。

香港国家安全維持法が処罰する対象は国家を分裂させ、「一国二制度」に公然と挑戦するごく少数の反中香港かく乱分子で、規律と法規を順守する大多数の香港市民および香港在住の外国人について言えば、その合法的権利と自由は一層よく保護されることにはなんの疑いもない香港国安法は香港特区の永久住民以外の者が特区以外で行う関連犯罪にも適用されるが、これは普遍的な世界的実践であって、中国の発明ではないし、世界の多くの国や地域の刑法規定ともさほど違わない。

「香港国安法の実施から4ヶ月以来、香港情勢は安定しつつ、社会秩序も徐々に正常に回復している。先習近平主席が深圳経済特区設置40周年祝賀大会に出席し重要な演説を行い、「一国二制度」の新たな実践をより充実させていくよう強調したこれは中央政府が香港の安定を維持、繁栄を促す決の表れである中華人民共和国憲法香港特別行政区基本法と「一国二制度」に基づき、香港必ず長期的繁栄安定実現できると信ずる

問い:香港に関する中国への厳しい日本の世論も時間がすぎるにつれ、変わっていくと思うのか。

孔大使:香港の情勢の好転につれ、日本の方々も香港問題をより正しく認識できるようになると信じている。

問い:中国から見ると、いま中日関係の改善、発展を妨げている最大の障害は何か。

孔大使:2014年以来、中日関係は全体的に改善と発展の勢いを保ってきているが、依然数多くの課題にも直面している。近年、国際情勢が複雑に変化する中、いかに中日関係の積極的な勢いを保つか、双方のより大きな政治的判断が問われている。相互信頼不足が目下の両国関係のネックであり、中でも安全保障分野の相互信頼の欠如問題が際立っている。これに関して、両国の指導者は幾度となく突っ込んだ意見交換をし、新しい時代にふさわしい中日関係を構築するという重要な政治的共通認識に達している。中には建設的な中日安全関係を構築することも含まれている。これは両国関係の改善と発展にとっては不可欠である

これから、双方は指導者が達している重要な共通認識をいかに実行し、いかにこうしたネックを乗り越えるかをともに考えていくべきである。まずは双方が中日両国および中日関係の近年の変化をはっきりと意識し、こういった変化の中で、相手をいかに正しく把握し、認識し、また客観的にお互いの関係を捉えるかが極めて重要である。そして、第4の政治文書中の「互いに協力パートナーであり、互いに脅威とならない」という明白の政治合意をいかに幅広い社会的合意にかえ、両国政府の具体的な政策に移すかは双方がしっかりと考えるべき。さらに、現在の中日関係はもはや二国間の範疇を超え、地域と世界への影響がますますましていく。これを念頭に、中日関係の新たな戦略的価値を絶えず見出す必要がある。

問い:安全分野での相互信頼の欠如は具体的に何を意味するか。日本の防衛政策に中国側はかなりの不信感を抱いているのか。

孔大使:双方が安全分野において不信感をお互い抱いているのは否めない。これは新しい時代にふさわしい中日関係を構築する客観的な需要にまだかなっていない。双方がこのネックの突破に努めるべきである。

問い:日中関係について、菅政権への評価はいかがなのか。

孔大使:菅総理が就任してまもなく、習近平国家主席との間で、初めての電話会談が行われた。先般、臨時国会での所信表明演説の中でも対中関係について言及があった。われわれはこれに対し、積極的な評価をしたい。菅総理が官房長官時代、中日関係の改善、発展に関する政策決定に関わり、経緯もよくおわかりである。これまで日本政府および各界との接触の中で、われわれは菅総理が安倍内閣の積極的な対中政策を継承し、引き続き安定した対中関係を発展させる意向を感じている。これは中国側の目標とは一致するものである。われわれも日本の新内閣とともに中日関係の持続的な改善、発展を推し進めていきたい。

問い:日本は今、外交的にかなり難しい立場にある。その中の極めて重要なのは「米中新冷戦」と呼ばれるような状況が熱い戦いになることは日本だけでなく、世界が望んでいない。南シナ海や台湾海峡で米中双方の軍事的な挑発行為が活発化している。偶発的なものを含む米中の軍事衝突の可能性についてどのように考えるか。

孔大使:中米関係においても、地域情勢においても、当面の情勢は以前より複雑になったのは言うまでもない。強調しなければならないのはいかなる困難とチャレンジを前にしても、我々は自国の主権、安全、発展利益をしっかりと守っていかなければならない。「新冷戦」との言い方にはわれわれは断固反対する。中米両国の間にどのような食い違いや問題があっても、双方の関係の補完性は変わっていない。互恵協力と共同発展の実現は十分可能である。中米は自身が担う重責を十分に認識したうえ、長期的な安定した両国関係の構築に努めるべきである。

南中国海は国際政治の闘技場ではなく、南中国海の平和、安定を守ることは地域諸国の共通の願いで、紛争の対話による解決こそが正しい道である。台湾問題は中国の主権と領土保全および中国の核心的利益に関わる問題で、中米関係の政治的基礎に関わる原則的な問題でもある。米国は中米間の3つのコミュニケで約束されていることを誠実に厳守し、中米関係および地域の平和、安定に資することを多いにやるべきである。

問い:中国側が自身の発展利益を断固として守ると言ったが、具体的に何を意味するか。

孔大使:今の世界は開放の世界で、各国が高度に溶け合い、利益が絡み合う世界である。中国と世界との融合も深まっている。発展利益は国内だけにあるでなく、地域および世界にも広がっている。こういった海外にある利益をいかに守るかは中国が直面している課題の一つである。

最大の発展途上国として、中国人民がよりよい生活を追求し、享受する権利がある。こういった権利は先進諸国の特権ではなく、世界各国人民が平等に、享受すべき権利である。昨日、成功裏に幕を閉じた中国共産党の5中総会では、「第14次五ヶ年計画」および「中国発展2035長期目標制定に関する意見」が承認された。米国などの国が中国政府が国家ガバナンスの健全化、人民生活水準高上に向ける努力を尊重し、中国の発展権利を尊重すべきである。「中国脅威論」をわざと取り上げ、中国の発展の抑制を企んではならない。

問い:日本国民として、台湾海峡での軍事衝突を懸念している。最近中国側の軍用機が頻りに「海峡中間線」を超えるなどしている。海峡情勢はエスカレートする傾向が見える。これについてどう考えるのか。

孔大使:われわれは海峡両岸の平和と安定を望んでいる。しかし、これに前提がある。即ち、台湾当局が「九二共識」(92年コンセンサス)をしっかりと守らなければならない。「九二共識」にチャレンジし、あるいは否定するいかなる言動も両岸の平和発展に不利な影響を与えかねない。われわれはこれを強く警戒している。誰もが兄弟の間で武力衝突が起こることを望んでいない。しかし、両岸の平和を維持する基礎は祖国統一および領土保全を断固維持することにある。われわれは台湾当局が一日も早く「九二共識」に戻り、両岸平和発展の正しい道に戻るよう望む

問い:中米対立の激化につれ、日本も影響を受けざるを得ない。最近、日本国内で、「敵基地攻撃」に関する議論がされている。また、米国による日本での中距離弾道ミサイル配備との話しもあがっている。中国側の見方はいかがなのか。

孔大使:中国は日本国内の「敵基地攻撃」に関する議論を注意深く見守っている。私が強調したいのは、中国を「仮想敵」としてミサイル防衛政策の見直しを図るいかなる主張にも中国は断固反対する。日本側が地域の安全安定と隣国の懸念と気持ちを十分に考慮し、慎重かつ適切に処理するよう希望する。

米国によるアジア太平洋地域への中距離弾道ミサイル配備は中国と関係諸国の安全保障を著しく脅かし、地域の戦略的均衡を破ることになり、中国は度々反対の立場を表明している。日本は中国の近隣国で、双方には互いに協力パートナーで、脅威とならないという政治共通認識がある。日本側が約束を誠実に守り、地域の平和安定、自身の安全保障および中日関係の大局に立ち、これを慎重に取り扱うことを希望する。

問い:米大統領選のあと、中米関係は変わるのか。

孔大使:米大統領選の結果がどうであれ、中米関係を発展させる中国の政策立場は一貫し、つねに衝突せず対決しない、相互尊重、協力ウィンウィンの中米関係発展のために力を尽くしている。どんな困難があっても、われわれはこの目標に向かって絶えず努力していく。

目下、世界ではこの100年間なかった大変局の進化が加速し、国際情勢が複雑かつ深層的な変化をしている。新型コロナウイルス感染症など地球規模の問題が未曽有の挑戦をもたらし、各国は利害が絡み合い、運命を共にしており、誰もわが身だけを守ることはできない。中米を含む各国は手を携えなければ、この一連の人類共通の挑戦に対応できない。

今日は対立の時代ではなく、対話の時代であり、分断の世界ではなく融合の世界であり、ゼロサムの関係ではなく、ウィンウィンの関係であるべき。大国としての中米は自身が担う重責をはっきりと認識し、相互理解と尊重を基礎に、より安定した健全な中米関係を発展させて、「ポストコロナの世界」におけるグローバルガバナンスを築くために積極的役割を果たすよう期待している。これは中米の長期的利益にかなうものであり、国際社会の普遍的な期待でもある。

問い:新疆ウイグル自治区でウイグル族住民が強制収容や強制労働をさせられているとされる問題で、欧州首脳らから独立した視察団の現地派遣を求める声が出ている。中国側はそれを受け入れるのか。

孔大使:近年新疆のいくつかの地方で法に基づいて教育訓練センターを設置して、注目を集めている。これについて、一部のメディアがいわれなき中傷誹謗をし、事実無根の報道をしている。個人的な見解として、結論を出すまえ、せめて事実真相をしっかりと把握すべきである。中国側がとった一連の措置は宗教過激主義のまん延拡散、暴力テロ事件の頻発の勢いを効果的に抑え込むためである。受講者は教育訓練センターで受けたのは言語、法律、職業技能などの訓練と脱過激化カリキュラムであり、受講者の人身の自由と諸権利は法によって保障された。教育訓練センターはすでに解散し、受講者は全員学業を終えて、社会に復帰している。多くの人がこれで暴力過激主義団体の影響から脱却でき、真の社会復帰が果たせた。

日本を含め、これまでに外国の1000人を超える外交使節、国際機構の職員とメディア関係者が前後して新疆を訪れた。新疆は国際社会の反テロ・脱過激化闘争に重要な貢献をし、貴重な経験を積んだというのが、彼らの共通の認識である。欧州連合(EU)とその加盟国の中国駐在使節が新疆訪問を希望し、中国はすでに同意しかつ手配をするとしている。われわれは客観的で公正な立場を取るすべての外国の人々が新疆を見て回り、真実の状況を実際に知ることを歓迎する。

ここで、新疆関連の問題の本質はいわゆる人権、民族、宗教問題ではなく、反テロおよび反分裂問題であることを指摘しておかなければならない。新疆でとられた反テロと脱過激化の措置は、中国の法律にも国際的実践にもかなっており、新疆の各民族に幅広く支持されているだけなく、国際的反テロ事業にも積極的な貢献をしている。

問い:コロナへの初期対応には米国や国際社会からも厳しい声がある。当時の対応やウイルスの起源について、国際機関や専門家による検証を受け入れる用意はあるか。

孔大使:新型コロナウイルスはまったく新しいウイルスであり、その発見と認識には一つの過程が必要で、この過程はまだ終わっていない。中国は感染について初歩的結論が出た後、いち早く関係方面に報告し、責任ある態度を示した。中国の感染対策行動は世界に公開され、経緯ははっきりし、事実のデータ一目瞭然でる。一部の国が科学と事実を顧みず、いわれのない中国への攻撃誹謗中傷をし、こういったやりかたはまったく事実無根である。関連する国は自身の感染対策自国民の生命健康を守ることに精力を注ぎ、世界の感染対策協力のために建設的な役割を果たすよう希望する

新型コロナウイルス感染症発生後、中国は世界保健機関(WHO)が全世界の感染対策の指導的役割を果たすのを積極的に支持し、WHOと緊密な協力をしてきている。予防制御の国際協力に深く参画し、国際社会の感染との闘いのためにできる限り支援と援助を行った。今年711日から82日にかけて、WHOの専門家が中国で新型コロナウイルスの起源の共同研究のための予備協議を進めた。このほど、習近平主席も第75回国連総会の一般討論演説で、ウイルスの起源と感染経路のグローバルな科学研究に積極的に参加すると重ねて表明した。ウイルスの起源調査は科学の問題で、これを政治化すべきではない。中国はこれについてWHOと緊密な意思疎通協調を続け、世界のウイルス起源解明と感染対策協力に貢献する。

問い:新型コロナウイルスの起源調査について、中国側とWHOとの協力について、具体的な日程はあるのか。

孔大使:知っている限り、中国とWHOとはそれに関し、順調に意思疎通をしている。

問い:王毅国務委員兼外交部長は全人代の記者会見で、日本人は「心の病」を治し、中国の発展と振興との事実を理性的に認識し、受け入れるべきと言った。自分はそれに賛成するが、同時に日本が中国の発展を客観的で理性的に捉えるまで、まだ長い道のりがある。これをどう思うのか。

孔大使:お互いが素直な気持ちで問題を直視した上で、歩み寄る姿勢を見せ、前向きな努力をすることが大事である。具体的にいうと、経済貿易協力を更に活性化し、利益の絆を強め、両国国民が受け入れやすい形で民間交流を促進することで、相互理解と相互信頼絶えず増進すべきである。われわれもこれを目標に、引き続き日本各界各層との交流を力惜しまずしていきたい。

問い:香港や新疆の問題について、われわれはそれに関する歴史経緯と中国側の立場を十分、認識している。しかし、こういった中国側の主張が中国の国際的なイメージに損を与えたのではないか。

孔大使:われわれは非常に複雑な国際環境の中で生きている。体制、歴史、伝統などの方面における各国の違いは国際社会の多様化の一つの特徴である。残念なことに、一部の国はこの世界の多様性を尊重することができず、体制が違うだけで、異様な目で他国を見る。自分と違う国を正視できず、受け入れられない。多様性は世界の発展の源であり、中国もこの多様の世界の一部である。米国はいくら中国をバッシングしても、いくら中国を変えようとしても、そういう企みは成り立てず、中国は米国にならない。われわれも米国を変えるつもりはない。相手を変えるような考え方自体は時代遅れで、必要もない。香港、新疆に関わるいわゆる「問題」は米国と一部の国が中国バッシングをするための政治的道具に過ぎない。

われわれはいわゆる中国の国内の問題を中国バッシングするための政治的道具として利用することに断固反対する。どのようなチャレンジがあれ、われわれは国の統一、安全および領土保全を断固守らなければならない。一部の国からの圧力があるからといって、それに妥協するようなことは断じてない。また、メディア報道などの影響で、誤解をもつ声に対し、中国側は謙虚に耳を傾け、誠意ある努力をし、誤解の解消に努める。

問い:日本は今、「自由で開かれた印度太平洋構想」の推進に力を入れているが、力による主張ではなく、ルールに基づいた秩序の重視などと言っている。これについて、中国側はどのように捉えているのか。また、「印度太平洋構想」は日中の安全保障分野での戦略的相互信頼にマイナス影響を与えないのか。

孔大使:日米豪印が推進しているいわゆる「自由で開かれた印度太平洋構想」について、中国側はずっと注意深く見守っている。米国の考えかについて、各方面がよくわかっていると思う。特定の国を対象に、地域の分裂、対抗、対峙ないし対決といったゼロサム的な関係をこの地域で繰り広げていくことにはわれわれは一貫して反対する。特定の国を対象に、内向きで排他的なグループを作ることは地域の平和、安定および団結に大きなマイナス影響を与えかねないと思う。われわれは各方面が地域の発展と繁栄の促進により力を注ぐことを希望する。

問い:最初は、日本では最初「印度太平洋戦略」という風にいっているが、最近はいわなくなった。

孔大使:日本は地域の重要国家である。中日両国は地域の振興、協力、発展および団結のために、重要な責任を果たしていかなければならない。これも新しい時代にふさわしい中日関係を構築する内容の一つである。米国が「印度太平洋構想」を以て、地域情勢を正常な軌道から引っ張り出そうとしても、地域国家が素直に、米国のやり方に追随していくとはわれわれは思わない。各国は自身の戦略や国家利益で判断し、行動すると思う。

問い:大使は長く日本にいて、最近の日本が何か変わったと感じているか。特にコロナ感染症がもたらした変化について。

孔大使:日本は日々変わっている。東京オリンピックは日本ないし世界においても大きなイベントである。日本が国民の心を奮い立たせ、国を作り直していく重要なチャンスでもある。残念なことに、東京オリンピックは感染症の影響で、延期をせざるを得なくなった。われわれとしては日本が一日も早くコロナの感染に終止符を打ち、東京オリンピックを順調に開催することを心より祈っている。再来年、北京では冬季オリンピックが開催される。双方がお互いに支えあい、関連する協力を進めるべきである。双方がともにオリンピックの勢いを追い風に、交流協力をいっそう強め、自国および地域の更なる発展を実現することを希望する。