日本から中国東北などへ生産能力移転の動き新華社解説
2011/04/21
 

 大連、瀋陽、長春などの調査、取材で、地震、津波、原子力危機などの影響で短期的に日本の在外資金の日本国内への還流、円高および商談中の事業投資の延期などが見られるが、日本から中国東北などへの生産能力移転の動きが初歩的に現れていることがわかった。

 遼寧省対外貿易経済協力庁日韓投資促進課の孫毅・副課長によると、これまでの累計で同省は6890社余りの日系企業を認可し、外資利用実績は121億ドルに達している。日本の大地震の後、同省の個別商談が影響を受け、例えば瀋陽三浦装飾材料、和田サッシ事業は日本側が契約を一時停止し、日立グループは訪問を延期し、中央三井信託銀行、ヤマックスによる建設用構造物事業も延期になった。

 「しかし、一部日系企業は中国東北に積極的に移転をはかっている」、孫毅氏はこう強調し、次のように述べた。先月21日、日本の自動車メーカー大手の社長が来訪した。40億元(1元=約13円)を投資し、大連で中国自主ブランドメーカーの奇瑞と合弁で自動車生産することを計画しているという。日本側の投資意欲に地震の影響が見られないだけでなく、これまで以上に積極的、主体的に大連保税区への進出を加速する可能性がある。

 大連開発区企業誘致担当の宋芳氏は記者に次のように語った。旭硝子は1億ドルを投じ、太陽電池パネル用ガラス生産ラインを1本新たに建設することを決めた。旭硝子特殊ガラス(大連)有限公司は現在、中国で唯一の太陽電池パネル用ガラスの供給業者で、1993年に旭硝子が全額出資で設立した。同公司はフロートガラス生産ライン1本、ライン・ガラスコーティング設備1セットを保有し、主に低反射コーティングガラス、太陽電池パネル用ガラスを生産している。

 このほか松下蓄電池(瀋陽)有限公司の責任者は、瀋陽化学工業パークへの移転、生産拡大、投資拡大を検討中で、具体的な点について話し合っていると明らかにした。震災後に吉林省を訪れた丸紅の鹿間千尋常務取締役も、これまでの基礎を踏まえ、吉林との多くの分野で協力を強化すると表明した。

 日本の生産能力移転は中国東北地区だけでなく、他の地域でも兆しがみられる。

 今月6日、通信機器収納用キャビネット製造最大手の日東工業は北京で記者会見を開き、中国現地子会社の資本金をこれまでの120万ドルから1550万ドルに増やすことを発表した。日東工業の知崎喜之海外本部中国推進部長はあいさつの中で、取締役会および経営層は中国の発展の前途に対し自信に満ちていると語った。

 日本のアドヴィックス自動車ブレーキシステム(中国)技術研究開発センター事業の契約調印式が8日、江蘇省常州市で行われた。アドヴィックスは日本の自動車ブレーキシステム供給最大手。

 これらの事例は業界から日本から中国への製造業移転加速のシグナルと解釈されている。

 日新電機(大連)技術開発有限公司の范鵬輝社長は次のように語った。日新電機は本社が京都にあり、今回の大地震による直接的損失は比較的小さいが、2―30社の供給業者が仙台の震災地域にあり、生産、物流がストップし、供給チェーンが遮断された。大震災で日新電機のような大企業が中国本土の日系企業の基盤がしっかりしている地域、特に大連で供給業者を求め、さらに生産能力を移転する可能性がある。住友電工・日新電機は世界の大企業500社に入り、中国に13の子会社がある。

 日東工業の加藤会長は先ごろ次のように語った。日本にある8工場のうち2工場が震災の影響を受けた。これが中国進出を加速する直接の理由だ。今回の中国投資では一部は耐震工業製品の生産に振り向ける。また中国の製造業自体の発展加速も進出を急ぐ重要な理由である。

 東北財経大学の金鳳徳教授は次のように考えている。エネルギー面をみると、日本の多くの地域が今後比較的長期間、電力供給不足に直面する。「大口電力ユーザー」の工業企業は、生産再開は無論、再建でも電力供給不足がネックとなる。同時に今回の事故で原発の従来の「安全グリーン・エネルギー」のイメージが完全に崩れ、日本の多くの大型多国籍企業がエネルギーの見地から産業移転のテンポを速めると予想できる。

 ブリヂストン(中国)投資有限公司PR部の章ブン(雨かんむりに文)氏はこうした見方に賛同し、「日本国内では一時、計画停電が行われ、夏には一時的に電力不足に陥ると予想され、そのため日本からの輸入品の国産化を急いでいる」と語った。同公司は現在、瀋陽、天津、無錫、恵州などに四つの工場と二つの研究開発機関、一つの研修センターを開設している。

 孫毅氏は次のように分析している。中長期的にみて、今回の地震は必ず日本のエネルギー戦略、産業配置、企業経営モデルに重大かつ深遠な影響をもたらす。中国は地理的優位性と産業面の既存の優位性を生かし、主体的に打って出て、チャンスをつかみ、日本からの産業移転を積極的に受け入れるべきだ。

(大連4月19日発新華社)