中国の軍事費なお低水準
2006/04/17

 

 中国国務院が全人代に審議、承認を求めた「2005年度中央・地方予算の執行状況と06年度中央・地方予算案に関する報告」で、2006年の国防支出は前年比14・7%増の2807億2900万元(1元=約15円)が計上されているが、週刊誌「瞭望」の論文は、中国の軍事費はなお低水準にあり、軍事費を適度に増額するのはそんなに非難されることではないと指摘している。

 近年、経済の発展に伴い、中国の国防経費はいくらか増えている。2006年の国防予算は2838億元で、およそ351億㌦にあたり、前年の予算執行額より14・7%増えた。だが国防費支出予算は当年度の全国の財政支出予算の7・4%で、その割合は数年前とほとんど変わらない。他の諸国に比べ、中国の国防費は絶対額や国民総生産(GDP)に占める割合も、また財政支出に占める割合も、比較的低い水準にある。

 例えば2005年、中国の軍事費は302億㌦で、米国は4017億㌦、英国は488億㌦、日本は453億㌦、フランスは365億㌦だった。中国の軍事費のGDPに占める割合は1・36%で、米国は3・6%、英国は2・59%、フランスは1・98%だった。中国の軍事費の財政支出に占める割合は7・43%で、米国は17・8%、フランスは11・4%、ドイツは9・25%だった。

 中国政協全国委員で、元広州軍区副司令員龔谷成中将は、中国の国防支出の現状を2つの面から分析すべきだとみている。

 まず、中国はいかなる国にも軍事的脅威となっておらず、中国の軍隊が遂行しているのは防衛作戦の任務である。国家の安全・統一を守り、国家の発展を保証し、国家の根本的利益を守ること、これが中国の軍隊の職責・使命である。中国は外国に軍隊を駐留させず、また決して覇権を求めない。軍事費は防衛作戦の必要に合わせたもので、軍隊の任務に対応している。

 中国は陸と海を併せ持ち、国土の広大な大国である。960万平方㌔の陸地、約300万平方㌔の海洋、1・8万㌔の海岸線と2万㌔の陸地国境線があり、国防の任務は非常に重い。解放軍総後勤〈兵站〉部の関係責任者は、近年、条件の厳しい辺地に駐屯する部隊の生活施設建設資金だけで20億元近くに上っていると説明する。絶対数をみると、中国の軍事費は米国よりずっと少なく、日本よりも少ない。中国は230万人の兵員を擁しており、軍事費300億㌦余りは1人当たりでみても、全体でみても少ない数字である。さらに言えば、中国の軍事費は国民経済の発展、国防の近代化に対応させたものであり、国の経済総量の増加に伴って増え続けるのはごく当たり前のことだ。現在中国の経済規模は18兆元に、財政収入は3兆元に達している。不確定要因がなお存在する状況下では、国の平和と発展を確保するため、国防力整備も経済成長に対応させるべきで、そうでなければ軍隊の役割を十分に果たすのは難しい。

 次に、中国軍はいま機械化・半機械化型から情報化型への転換を進めており、軍事費を増やすのは軍隊自身の整備にとって必要なことだ。人民解放軍の歩みをみると、中国の軍事装備は徐々に整えられており、軍隊の機械化はまだ完了していない。近代化された軍隊を建設するには、海軍、空軍を強化する必要がある。機械化された装備の改良に力を入れると同時に、情報化の任務を達成して、両者の釣り合いをとるようにする必要がある。したがって、軍事費を適度に増額するのはそんなに非難されることではない。

 このほか、中国の国土は高冷な東北、西北から高塩〈大気中の塩分が多いこと〉多湿、高温の南沙・西沙まで、4つの気候帯に跨がっており、環境の大きな違いは既存の作戦装備の修理、保守にとって厳しい試練となる。運用コストが膨大で、従来の装備をよく使用するには、その維持・更新を資金面で支えなければならない。機械化、情報化のテンポを速めるだけでなく、国防装備の不足を解消するには、在来の装備を維持、更新する必要がある。

 政協全国委員で、元成都軍区副司令員の傅秉耀中将は、現在の軍事費支出は主に生活に充てられているとみている。中国軍の兵員は230万で、食、衣、生活、補給などが軍事費のかなりの割合を占めている。この数年、軍事費の中の大きな部分は、軍隊の給与不足問題を解決するために使われた。以前、軍隊の給与を公務員より20%高くすることが強調されたが、現在、公務員の給与の50%より低いところさえある。軍事費の伸びの大きな部分は、人員の給与・福利待遇を引き上げようとするものである。

                                       中国新聞サイトより