中国の新エネルギー産業が世界中の話題になっている。EV、リチウムイオン電池、太陽光発電の関連製品は「新・三種の神器(新三様)」と呼ばれる。これらは中国経済に強い原動力を注ぎ込むとともに、世界経済の回復とグリーンな低炭素社会の発展に寄与してきた。
国際再生可能エネルギー機関(IRENA)によると、2023年に世界で新たに設置された再生可能エネルギーの設備容量のうち、中国からの貢献度は半分以上を占めた。
中国の風力発電と太陽光発電製品は200以上の国・地域に普及している。多くの発展途上国がクリーンで安心できる手ごろなエネルギーを使えるよう後押しした。
中国の新エネルギー産業に過剰生産は存在しない。中国は近年、供給サイドの構造改革に取り組んできた。23年の工業設備稼働率は平均で約75%であり、米国の78%とほぼ同じ水準にある。
中国製EVの主な供給先は国内市場であり、輸出規模は大きくない。中国製自動車の輸出比率は23年時点で15.9%にすぎない。7割を超すドイツや約5割の日本と比べてはるかに低い。
中国の自動車輸出は伸びている。ただ一部でいわれる「世界を席巻する」ほどのものではない。
中国の新エネ産業が発展した背景には、市場での競争が生み出した比較優位性がある。巨大な国内市場や整備されたサプライチェーン(供給網)のほか、研究開発投資など企業のたゆまぬ努力がその優位性をつくり上げた。
中国の産業補助金が市場をゆがめているとの批判があるが、中国企業の業界は多岐にわたり巨額の補助金を各産業に振り向けるほどの余裕はない。各国の歴史を見ても、補助金に頼って永続的に栄えた産業はない。中国のEV購入補助金は22年末に終了した。
中国のEVはダンピング(不当廉売)でも在庫処分でもない。欧州で23年に販売した中国製EVの平均価格は3.1万ユーロ(約524万円)を超え、中国国内の販売価格より高い。欧州の消費者から好評を得ており、中国企業もニーズに応えるよう努めている。
中国国内でもスマートフォン大手の小米(シャオミ)が3月に発売したEVは納車期間が7〜8カ月に及ぶ。入手がなかなか困難な状況にある。中国製EVは全体として低価格ではなく過剰在庫も抱えていない。
中国が過剰生産しているとの非難はダブルスタンダード(二重基準)である。主要7カ国(G7)財務相・中央銀行総裁会議は、いわゆる「市場ルールにそぐわない政策や貿易慣行」に懸念を表明した。この非難を裏付ける根拠は乏しい。
産業発展の初期段階では技術開発のコストが高い。関連産業に一定の補助金を与えるのは各国共通のやり方だ。まさに多くの国が半導体産業に補助金を支給している。
米国は北米で組み立てたEVなどの新車購入に最大7500ドル(約116万円)の税額控除を与える。ドイツは米インテルや台湾積体電路製造(TSMC)のチップ工場にそれぞれ100億ユーロ、50億ユーロの補助金を出した。日本も直近3年で半導体の関連予算を約4兆円確保した。
過剰生産を言い訳に輸入制限を課すのは貿易保護主義に他ならない。インフレ抑制法(IRA)は国際ルールに反する差別的な条項に満ちており、同盟国まで対象にしている。
米国は中国から輸入する新エネ製品の関税をさらに引き上げた。これらの製品が米国市場に流入する道をほぼ完全に閉ざした。特定産業を政治や安全保障に絡めて問題とみなすのは正真正銘の「経済的威圧」だ。
こうした威圧は円滑で安定した世界の供給網を毀損し、世界経済と貿易の成長に打撃を与える。世界がグリーン経済に転換していくペースも鈍らせることになる。
日本はこれまで何度も日米貿易摩擦を経験してきた。競争で劣ればあり得ぬ罪を捏造(ねつぞう)し相手を抑圧する米国の振る舞いを身をもって感じてきたはずだ。
生産能力は結局、市場が決定する。1980年代から日系をはじめ大量の外国車メーカーが中国市場に進出した。当時「道あるところにトヨタ車あり」というCMのキャッチフレーズが中国全土に知れ渡った。
現在も数多くの外国車が中国各地で走っているが、外国車を過剰生産と非難する中国人はいない。市場経済の結果であると受け止めているからだ。中国は何十年にもわたり外国車を受け入れてきた。それなのに自国の自動車産業が成長の兆しを見せ始めたとたん、根拠のない非難にさらされるのは不公平だ。
中日の新エネ協力は両国の共通利益に合致する。両国は産業の供給網が密接に結びついている。ここ数年、省エネと環境保護が両国の経済貿易協力における最も重要な分野の一つとなった。
両国企業の協力も動き出した。トヨタ自動車と騰訊控股(テンセント)、日産自動車と百度(バイドゥ)はそれぞれ中国で製造販売するEVで協力関係を築いた。ホンダは華為技術(ファーウェイ)の部品を調達する。中国市場における販売シェアの維持・拡大を目指す。
我々はこのような取り組みを歓迎する。同時に日本の消費者が中国EV最大手、比亜迪(BYD)の日本市場参入を熱く迎えていることを評価する。
地球規模でみると、新エネ製品はなお不足しており、気候変動への対応に必要な需要を満たしていない。より多くの中日両国の企業がともに市場競争力を高め、世界経済のグリーンかつ持続可能な発展に一段と貢献することを期待する。