東北振興を引っぱる「五点一線」構想
2006/08/18
 
 

 「五点一線」――まだあまり知られていないが、中国の東北振興の鍵を握るとも見られる構想が動き始めた。「五点」とは、黄海と渤海に面した5カ所の重点発展区であり、「一線」とはその海岸線を貫く海浜道路である。

 遼寧省は今年2月、『沿海重点発展地域の対外開放拡大に関する若干の政策についての意見』(若干の政策に関する意見)を発表し、「五点一線」の建設を正式に打ち出した。

 「五点一線」とは、どういう構想か、現場はどうなっているのか、その持つ意義は何か――本誌の王衆一編集長と日本貿易振興機構企画部の江原規由・事業推進主幹がこのほど、それぞれ遼寧省を訪れて、関係者から取材した。これはその結果を報告する。

黄海沿岸の開発現場を見る

王衆一=文

 「五点一線」という開放的な経済構造をつくる構想は、東北にある古い工業基地を振興する国の戦略の実施にその端を発している。2004年に、東北アジアにおける重要な国際航空センターを大連に建設することが、渤海沿岸の重点地区の大開発や環渤海海浜道路の建設などの開放的な思考を引き起こした。

 古い工業基地の振興と沿海の開放という二重のチャンスに直面して遼寧省が出した『若干の政策に関する意見』は、環渤海地区の開放促進を基礎に、黄海地区の開発をいっしょに開放経済構造の中に納めるよう提起した。こうして、遼寧省のすべての沿海地区を網羅し、黄海、渤海の5カ所の重点発展区域と全省の海岸線を貫通する一本の海浜道路を建設するという「五点一線」の構想が、はっきりと浮かび上がってきたのである。

恵まれた沿海の土地資源

 「五点」とはどこを指すか。(地図参照)

 渤海側では

 ①遼西錦州湾沿海経済区(錦州西海工業区と葫蘆島北港工業区を含む)

 ②遼寧(営口)沿海産業基地

 ③大連の長興島の臨港工業区

 黄海側は

 ④大連の荘河花園口工業園区

 ⑤遼寧丹東産業園区

 「一線」とは、西は葫蘆島市の綏中県から東の丹東の東港市までの全長1443キロの海浜道路で、5カ所の沿海重点発展区域を含む全省の沿海地区を結び、開放経済を大いに促進する。

 瀋陽で取材に応じた遼寧省の李万才副省長は、遼寧省が地理的にも土地資源の面でも優位性があることを強調した。李副省長の説明によるとこうだ。

 まず東北地区について言えば、沿海にある遼寧の港が東北三省の大部分の輸出入を引き受けているところに遼寧の優位性がある。また全国的に見れば、海岸線に多くの干潟や塩田の跡地があり、ここは、外国の産業を迎え入れることのできる、めったにない貴重な資源があり、ここに土地資源の優位性がある。沿海の経済ベルト地帯につくられる5カ所の重点発展区域の総企画面積は374平方キロに達し、そのうち当初計画面積は140平方キロを超す。

 そして李副省長は、国内の一部地区の土地資源が、日増しに経済発展にとってボトルネックになってきていることが明らかとなっている今日、遼寧の港に近い海岸線の「黄金地帯」に設計された数百平方キロの開放された空間は、沿海の重点発展区域が対外開放の拡大を促進する優遇政策の実施とあいまって、国内外の投資家から特に注目されている、と楽観的に見ている。

 李副省長の話には根拠がある。彼はこの4月、遼寧省の経済貿易代表団を率いて日本と韓国を一週間訪問し、宣伝と推薦、紹介活動を行ったが、日本でも韓国でも非常に熱心に受け入れてくれたことを、自ら体験したからである。

 『朝日新聞』は、この代表団の訪問前夜、このニュースを大きく報道し、「五点一線」について紹介した。代表団は、日本では東京と大阪で、韓国ではソウルで、「遼寧省沿海重点発展区域説明会」を開催したが、招待状をだしていない多くの人がやってきて、参会者は予定人数をはるかに上回った。例えば東京では、150人を予定していたが、実際に来た人は360人に達した。

 日中経済貿易センターの谷井昭雄会長や日本国貿促の中田慶雄理事長は、沿海経済ベルト地帯の戦略構想に反映されている開放の更なる拡大に対する決意と気迫を賞賛した。関西経済連合会の秋山喜久会長は、なるべく早く大阪地区の中小企業を組織して遼寧省を訪問し、5つの重点地区を視察したいと表明した。

 韓国の優秀中小企業連合会の会長も、四十数人の代表団を率いて遼寧省を訪れ、「五点一線」を視察したいと言い、STX造船も、営口と葫蘆島を訪れて、造船の組み立てプロジェクトを視察したいと表明した。

 「人民中国」2006年9月号より