現代の庶民生活の中で宗教文化伝承 チベット
2014/04/04

   ラサ市民のツェリンチョガさんは去年、100万元余りをかけてチベット式の一戸建て住宅を購入した。2階に立派な仏堂が造られているほか、窓の下に福を祈る赤、青、白3色の細長い布幔(垂れ幕)が下げられ、屋根の四隅に経幡が挿され、軒の角に小さな煨桑炉〈松柏の枝を焼く炉〉が設けられている。

   仏教の盛んなチベットでは、経済・社会の発展に伴って、大衆の生活条件が改善される一方、宗教文化も近代的生活の中でその細部がよく伝承されている。

   遥かなチベット東部の村で、50歳の男性ダワジャムツァンさんは、毎朝家の2階の小仏堂に上がって、まず数十個ある浄水杯の水を換え、さらに長明灯に酥油(バター)を足す。それが終わってはじめて、道具箱を背負って仕事に出かける。

   ダワジャムツァンさんはチャムド地区ザツヤブ県エンド鎮シュエドン村の大工。農・牧畜民住宅供給事業のおかげで、2012年初めに、ゆったりして明るく、設備の整った2階建てのチベット式住宅に引っ越した。新居に移ると、さっそく2階の最もよい部屋を仏堂にあてた。

   チベット仏教を信仰する彼は、普段どんなに仕事が忙しくても、お勤めは「必須科目」だ。「いまでは、玄関先に県都に通じるアスファルト道路があり、村人たちは出稼ぎの機会が多く、衣食も心配ないが、村からそう遠くない煙多寺は線香の火が消えることはない。人びとは仏教の教義をかたく守り、村では窃盗、酔っ払い、殺生などは起きたことがない」、ダワジャムツァンさんはこう語った。

   ラサ市ドジエ路に住むプブツェリン老人は毎日早朝、転経筒(マニ車)をもって転経(特定のルートを巡って祈ること)に出かける。「大昭寺(ジョカン寺)の周りを数回巡れば、気持ちがよく、元気がでる」という。家には車もあるが、一つの修行である徒歩転経は怠けられない。昨年初め、ラサに歩道橋が出来て、転経中、大通りを横切る信徒はずっと安全になった。

   プブツェリンさんの息子、ツェダンさんは大分前にトラックを買って長距離輸送をしているが、新車が着いて最初にやったことは、運転席に平安を守る小さな仏像と縁起物の吉祥八宝を吊るし、経文を置くことだった。「私は仏教を信仰し、仏様が道中の安全を守ってくれるよう希望している」、彼はこう語った。この数年、チベットの自動車道路はますます延び、道路はよくなって、長距離を走るのにも心強くなったという。

   シガツェ地区サキャ県に向かう道を走っていると、遠くからでも、住宅供給事業による何棟もの真新しいビルが道路脇に聳えているのが見える。チベットの他の地域と違って、ここの建物の壁はほとんど黒、白、赤の3色に塗られ、日の光に照らされて、独特の風情を見せている。

   「この3種類の色で住居が飾られていることは、住人がチベット仏教サキャ派の信徒であることを物語っている。数年前、新しい建物の塗装をする時、村民委員会の幹部たちが手伝いに駆けつけた」、サキャ県ドシャ村のレンチンさんはこう語り、いま生活条件はよくなったが、ご先祖さまが残してくれた文化の伝統をなくすことはできないと続けた。

   宗教の信仰には、その媒体たる宗教用品が欠かせない。チベットでは各大寺院付近に広がる仏教用品の店が至る所でみられる。店内は商売繁盛で、唐卡(タンカ宗教画)、蔵香(チベット仏教で使われるお香)、仏龕、蓮花彩、浄水杯などなんでも揃っている。

   「毎日、大昭寺を巡る転経、朝仏の人波がたえず、普段でも一日の売り上げが5、600元に上り、大きな祭日になると、1日の収入が2、3千元になることもある」、八廓街で仏教用品の商売を営むザシラムさんはこう話していた。